史上最長の戦いとなった自民党総裁選も後半戦に入っている。前半に行われた全国各地の候補者演説会では、その土地の経済復興や活性化に関するリップサービス発言が目立つ。特に、沖縄で行われた演説会では、沖縄振興策について耳ざわりの良い言葉が並んだ。
ところが、沖縄振興予算について、内閣府はこのほど、2025年度予算案の概算要求で2820億円を求める方針を固めた。24年度の概算要求と比べて100億円の減額となり、沖縄県が要望していた3000億円台を4年連続で割った。各都道府県の予算は通常、省庁別に要求するが、沖縄に限っては内閣府が一括して予算計上する。
沖縄振興予算を巡っては、安倍晋三首相(当時)が当時の仲井真弘多知事に13年度から9年間、3000億円台を計上することを約束した。その期限となった21年度を最後に、3000億円台を割り込んでいる。
安倍氏の約束は、県が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を受け入れたことを前提になされたものだ。仲井真県政以後続いている減額は、移設に関する最高裁判決を尊重せず移設に反対を続ける玉城県政に対する政府の「回答」とも言える。
沖縄振興費を巡る交渉は、県にとっては復帰から続いている政治交渉だ。玉城知事は6日、自見英子沖縄担当大臣と面談し、来年度の沖縄振興予算に3200億円の確保を要望した。県の呼びかけで21年度から県市長会、県町村会との3者連名で要請していたが、今年は県の単独だった。
大田昌秀元知事のように「反基地」のカードを持って政府に全面的な対決姿勢を示しながら交渉するのか、基地容認派の稲嶺恵一、仲井真両知事のように政府・自民党との太いパイプを生かして交渉するのか。これまで、本土復帰後の沖縄県政はどちらかしかなかった。言い換えると、自主財源を増やす努力をほとんどしてこなかったと言える。
「沖縄の不都合な真実」(新潮新書)の共著者で沖縄事情に詳しい評論家の篠原章氏は、「沖縄県に与えられている税制上・財政上の優遇措置を全廃すると同時に、算定基準を見直せば、沖縄は普通の自治体になり、政治折衝による予算獲得の機会は大幅に減ずる」と指摘する。その上で、「誰が首長になっても安定的な自治体財源が保証されるような仕組みを作ることこそ重要だ。首長の政治力や政治的主張に左右されない自治体財政こそ、県民・市民から求められるものだ」と述べる。
下地幹夫元衆院議員は、総裁選候補者討論についての感想を自身のSNSで次のように書き込んでいる。「私の結論は、『沖縄のことは、沖縄の人で頑張らなければいけない。頼ることではダメだ』」。沖縄から、自公でも革新系「オール沖縄」でもない第3極の勢力が台頭する日はいつ来るのだろうか。
(豊田 剛)