不法抗議活動常態化で悲劇
論点すり替える玉城氏
沖縄県名護市で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事に抗議するため車道に出ていた女性と、交通誘導中だった警備員の男性がダンプカーに轢(ひ)かれ、うち男性が死亡する事故が起こった。移設工事現場付近では左派活動家らによる不法な抗議活動が常態化しており、県は昨年2月に車両の通行妨害を禁じる警告看板を設置したが、抗議者らの圧力に屈する形で撤去。その責任が問われることになる。(沖縄支局・川瀬裕也)
圧力に屈し警告看板撤去
免れられぬ県への責任追及
在沖米海兵隊所属の男による不同意性交問題で、地元メディアや反基地活動家らが米軍批判を強めている中、抗議活動の現場で悲劇が起きた。
辺野古移設工事に使用する土砂を搬入する名護市の安和港付近で6月28日、抗議活動で車道に出ていた70代女性が、現場で警備に当たっていた宇佐美芳和さん(47)と共にダンプカーに巻き込まれた。女性は足の骨を折る重傷を負い、宇佐美さんは頭部を激しく損傷し心肺停止で病院に搬送されたが、後に死亡が確認された。
警察関係者によると、事故当時、現場では女性含め3人が抗議活動に参加しており、ダンプの進行を妨害するため、道路をゆっくりと横断する「牛歩」が行われていたとみられる。土砂を積んだダンプが港の搬入口を出て左折する際、道路上にいた女性と、それを止めに入ろうとした宇佐美さんが巻き込まれた可能性があるとみて、防犯カメラの映像を確認するなどして捜査を進めている。
地元紙の報道によると、抗議活動を行っていた市民団体のメンバーは、事故原因について「警備員の合図に問題があったのは明らかだ」との認識を示し、「これまで6年間、事故はなかった」と、抗議の正当性を主張しているという。
この主張に真っ向から異議を唱えるのが、10年以上にわたり過激な反基地抗議活動の実態を追い続け、ラジオやSNSで発信を行ってきたラジオパーソナリティーの手登根安則氏だ。
手登根氏は、これらの車両の通行を妨害する抗議活動について「(牛歩をすれば)絶対に止まってくれるだろうという相手の善意につけこんだ卑怯(ひきょう)なやり方だ」と批判。過去に、普天間飛行場付近で抗議者を避けようとして車両同士が衝突した事故などを例に挙げ、「いつかは人命にかかわる事故が起こるだろうと思っていた」と憤った。
事故を未然に防止するため、県は昨年2月、車両の通行妨害を禁じる警告看板を現場付近に複数設置。看板には、牛歩行為は「港湾管理条例第3条5号で定める禁止行為に該当します」として、禁止行為を行った場合は「過料を処することがあります」との文言が掲げられた。
これに対し、抗議活動を主導する「オール沖縄」系の市民団体らが猛反発。同年4月24日には約80人が県庁に押し掛け、看板撤去を求め声を上げた。代表者らが照屋義実、池田竹州(たけくに)両副知事や県土木建築部長などと面談し、その場で県は看板を撤去すると表明した。
この問題について手登根氏は、「活動家の圧力に屈して看板を撤去した県の責任は大きい」と指摘。「県の条例より、反基地の意思が上位に位置付けられているのはおかしい」として、どのような法的根拠で看板を撤去するに至ったか、徹底追及すべきだと主張。また手登根氏は、玉城デニー知事が同事故を受け、安全対策が取れるまでの間、土砂の搬出作業を中止するよう求めたことについて、「論点をずらしていて本末転倒だ」と批判。安全対策を行うのは県の責任だとした上で、「本来は工事ではなく、行き過ぎた抗議活動を止めるべきではないか」と語気を強めた。
しかし、林芳正官房長官は7月1日の記者会見で、「状況の把握や、再発防止のための措置」として、土砂の運搬作業を一時中断すると発表した。
沖縄で過激化する抗議活動の問題はたびたび問題視されてきたが、取り締まりなどを含め、不完全燃焼の対応が繰り返されてきた実態がある。今回は人命が奪われた事故だけに、県への責任追及は免れないだろう。