自民地方連敗の波に歯止め
2年後の知事選へ弾み
任期満了に伴う沖縄県議選(定数48)は16日、投開票され、反知事派の保守系野党・自民、公明、中立が改選前から4議席増で大勝して過半数を獲得。16年ぶりに県議会を奪還した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を掲げ、国と対立を続ける玉城デニー知事と、県政を支えてきた「オール沖縄」勢力に県民からの厳しい審判が下った形だ。
(沖縄支局・川瀬裕也)
公明倍増、共産・立民は半減
投開票直前の週末は、梅雨前線の影響で県内各地が豪雨被害に見舞われ、一部地域では避難が呼び掛けられる中での異例の選挙戦となった。その影響もあり、投票率は45・26%と、前回(46・96%)を1・70ポイント下回り、過去最低を更新した。
即日開票の結果、野党の自民や公明、保守系無所属が票を伸ばし、8議席差の安定多数で16年ぶりに過半数を奪還した。一方、玉城氏を支える「オール沖縄」勢力は現職の落選で4議席を失う厳しい結果となった。
当選者の党派別内訳は、野党が自民20人、公明4人、維新2人、無所属2人の計28人。与党は共産4人、地域政党・社会大衆党(社大)3人、立憲民主2人、社民2人、無所属9人だった。
激戦区となった那覇市・南部離島区(定数11)は、与党現職の引退により空席となった2議席に、野党・公明の新人が入り込んだことで、保革の勢力図が逆転した。
自民は、国政での、党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題の逆風を受けながらも、本部の党幹部に頼らない地道な地盤固めを徹底したことで、現職を守り切り、公認候補20人全員当選を果たした。中でも、自民の重点選挙区の一つ、中頭郡区(同5)で新人・宮里洋史氏が当選し、与党現職から1議席を奪ったことは、野党勢力拡大を大きく印象付ける結果となった。
選挙戦序盤から党代表の山口那津男氏が沖縄入りするなど、異例の強気の姿勢で臨んだ公明は、議席を2から4へと倍増させ、躍進を遂げた。
一方、公認候補7人全員当選を至上命令とする共産は、沖縄市区(同5)、島尻・南城市区(同4)、宮古島市区(同2)で1人ずつ、合計3人が落選し、勢力が半減した。立民も4議席から2議席へと衰退した。
与党系候補は玉城氏との連携を強調しながら、辺野古移設阻止などを「民意」として掲げ戦ったが、成果を挙げられなかったことから、今回の選挙で、基地問題は大きな争点とはならなかったことがうかがえる。
「政治とカネ」を巡る問題で、全国的に自民党推薦候補の落選が相次ぐ中、連敗の波に歯止めをかける形となった今回の県議選について、同党の宮崎政久衆院議員(九州比例)は、「新人候補を含め、自民党が多くの県民の支持を受けていることが示されたことの意義は大きい」と評価した。
選挙結果を受け玉城氏は、「われわれに何が足りなかったかを反省し、(結果を)しっかり受け止めて真摯(しんし)に対応する」としながらも、「辺野古移設反対は揺るぎない思いだ」と改めて表明した。
玉城氏は告示日の7日、自身の後援会が運用するSNSに投稿した動画の中で、県議選について「2期目折り返しを迎える私の県政における事実上の信任投票です」と位置付けていた。であるならば、今回の結果は事実上の「不信任」と受け取られることは必至だ。
過半数を失い、「ねじれ議会」となった玉城陣営は今後、予算や議案の採決で不利な立場に立たされるため、次期知事選までの県政運営が不安定なものとなり、辺野古移設阻止に向けた新たな提訴などのための議決の難易度も高まる。
自民党県連は、議席を伸ばした要因について「玉城知事の行政運営能力そのものへの疑問、不信が県民の間に広がっていると思われる」とした上で、「生煮えの給食費無償化策、水道料金30%アップといった県民生活にとってマイナスにしかならない案を支持する県政与党革新勢力へのNOが突き付けられた」と分析する。今回の結果を足掛かりとして、2年後に予定される知事選での県政奪還に向けて勢いを付けたいところだ。