災害、有事への備えを
細谷信壹氏が講演

建国記念の日の11日、那覇市内で「皇紀2684年建国まつり」(主催=同実行委員会、共催=沖縄県神社庁)が行われ、廃資源を有効活用することで企業や官公庁の廃棄費用問題解決に取り組むリチャージ株式会社の細谷信壹氏が記念講演を行った。細谷氏は、沖縄のインフラ環境や安全保障分野での問題点を指摘し、「日頃から災害や有事に備えることが重要」とした上で、昨今の防衛力強化を巡る議論が県内で賛否分かれていることを踏まえ、「抗(あらが)わない民族は滅びる」と語った。以下は講演要旨。
(沖縄支局・川瀬裕也、写真も)

沖縄では、昨年の台風6号で停電や断水などインフラが停止しただけでなく、野菜などの食材不足が発生し、復旧に大きな時間がかかった。こうした状況で南海トラフ地震のような大災害が発生した場合、(沖縄でも)相当な規模の被害が想定される。
現在、県内の水道管(の36・8%)は、耐用年数の40年を超えている。国内での破損や漏水件数も年間2万件を超えている。これら国内すべての水道管を修理するのに130年かかると言われている。その中で行政は最低限、水と食料をあらかじめ確保しておかなければならない。
技術の発展で、空気中の水分を利用して水をつくる設備などが次々と登場している。これらを自治体がいち早く導入しておくことで、災害や有事の際、本州からの支援物資の到着が遅れても1~2週間しのげる。
自衛隊を巡り賛否さまざまな意見があるが、これらは国内的な議論にすぎず、日本人が憲法9条について揉(も)めている間に、他国は戦争の準備をしている。(今年に入り)中国海警局の艦船が尖閣諸島(石垣市)沖(の領海を飛行中)の自衛隊機に対して「領空侵犯だ」と主張しているが、これはおかしい。
万が一、有事が発生した場合、われわれは自主的に避難しなければならない。自衛隊が避難や誘導に追われ、敵と応戦できなければ民間人は全員やられてしまう。そのためにわれわれは普段から避難訓練を実施しておかなければならないが、県内ではあまり実施されていないのが問題だ。
中国は「第一列島線」上にある尖閣諸島や沖縄地域が欲しいから、さまざまな手段を取っている。実際にウクライナ戦争では多くの人が殺され、人質交渉のために連れていかれた。
そうならないために、防衛設備や装備を備えた自衛隊がなければならない。人間の歴史上、抗わない民族は滅んできた。平和は与えられるものではない。
うるま市訓練場計画自衛隊が住民説明会
理解を求めるも地元自治会は反発
防衛省は11日、沖縄本島中東部、うるま市石川のゴルフ場跡地に、陸上自衛隊の訓練場を整備する計画について、地元住民への説明会を開催したが、地元自治会が反発しており、工事は難航が予想される。
同訓練場の新設は、台湾有事などに備え南西諸島における防衛力を強化する、いわゆる「南西シフト」の一環で、2026年度の着工を予定している。同省は、訓練場内で実弾や空砲などは使用しないことや、ヘリの離着陸は緊急時のみにとどめること、夜間訓練を実施する場合は事前通達を行うことなどを説明し理解を求めた。
一方、これに先立ち1月14日、地元の旭区自治会は臨時総会を開き、整備計画反対の決議を採択。29日に沖縄防衛局に計画の撤回を求める要望書を提出した。これに続いて、2月1日、地元の15自治会でつくる石川地区自治会長会も会合を開き、訓練場設置に反対の立場を取ることで一致し、横断幕の設置などを行うと発表している。
これらの動きを受け、玉城デニー知事は3日、防衛省に対し、「地元の意向を尊重する姿勢を示していただきたい」と注文を付けたが、賛否について自身の考えには触れなかった。
政府は南西諸島防衛の要として陸自第15旅団の規模を増強し、師団に格上げする方針で調整を進めている。本島中部に位置する今回の訓練場予定地は同部隊が使用する上での利便性が高い立地だといえる。
木原稔防衛相は同整備計画について、「周辺地域への影響を最小限にとどめる措置をしっかり検討したい」としている。