辺野古移設工事再開で賛否

設計変更承認 国が初の代執行

地元と県の間で温度差

プラカードを掲げ、埋め立て工事の反対を訴える人々=12日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前(川瀬裕也撮影)

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事の設計変更承認を巡る国の代執行を受け、政府は10日、大浦湾での工事に着手した。これに対し、玉城デニー知事をはじめ、オール沖縄勢力は猛反発し、地元紙なども連日批判キャンペーンを展開。一方で、宜野湾市の松川正則市長や、名護市の渡具知武豊市長らは冷静に評価する立場を示しており、賛否が分かれている。(沖縄支局・川瀬裕也)

玉城氏・オール沖縄は猛反発

松川氏・渡具知氏、冷静に評価

「沖縄県がこれまで再三求めてきた真摯(しんし)な対応に応じることなく、一方的な文書の送付が重ねられるばかりで、知事の権限を奪う代執行に至り、本日、工事の着工が強行されたことは、きわめて乱暴で粗雑な対応だ」――。大浦湾での工事が再開した10日、玉城氏は報道陣にこう語り、不満をあらわにした。

昨年12月28日、斉藤鉄夫国土交通相が史上初となる工事の設計変更承認を代執行した。県は、代執行訴訟における福岡高裁那覇支部の判決に不服があるとして同月27日に最高裁へ上告受理申立てを行ったが、工事を止める効力はないため、年明けの1月10日、工事が再開された。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設で、軟弱地盤がある大浦湾側の工事に着手し、作業船から石材を海へと投下する重機=1月10日午後、沖縄県名護市辺野古

着工から2日後の12日、玉城氏を支えるオール沖縄勢力は、辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で、工事に反対する集会「代執行埋め立てを許さない県民集会」(主催=辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議)を開催。違法設置テント周辺に集まった約900人(主催者発表)は、色とりどりのプラカードや横断幕を掲げ、「埋め立て強行は『令和の琉球処分』」、「新基地建設絶対反対」などと声を上げた。会場では玉城氏からの激励メッセージも読み上げられた。

一方で、移設元の宜野湾市長、松川氏は昨年12月28日、「返還の見通しが立ちホッとしている」と工事再開を歓迎。一方で、代執行という形での工事再開となったことについて「非常に残念だ」とした上で、「国と県の対立は、もう大きな溝になってしまったのではないか」と憂えた。

また移設先の名護市長、渡具知氏は、「裁判で判決が示され、このような(代執行という)形になったと理解している」と冷静に受け止めた上で、「工事の進捗(しんちょく)が現実的になっている」と評価し、「(地元・久辺3区など)近隣住民の不安を払拭(ふっしょく)し、生活環境を守ることが私の責務だ」と述べた。工事再開に対して、地元と県の間に温度差が見える。

このような中、県内大手地元紙は、「大浦湾、埋め立て強行」「政府、民意顧みず」(1月11日付琉球新報)、「前倒し着工民意無視」「海と自治を壊す愚行」(同日付沖縄タイムス)など、紙面を大きく使って大批判キャンペーンを展開。大浦湾の軟弱地盤の工事の難しさを指摘する連載も開始し、「工事計画に暗雲」と煽(あお)り立てている。

工事が開始された10日、会見を開いた林芳正官房長官は、「辺野古移設が唯一の解決策という方針に基づき、着実に工事をしていくことが、一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながる」として、工期は「9年3カ月」だと再度強調した。

移設工事では、辺野古崎南側の埋め立てはほぼ完成しているものの、北側の大浦湾では2020年に軟弱地盤が見つかったことにより大幅に工期が延びる見通しとなった。

埋め立て海域の護岸を整備した後、サンドドレーン工法やサンドコンパクションパイル工法などを用いて軟弱な層に砂の杭(くい)を約7万1000本打ち込む改良工事が今回再開されたことになる。

玉城氏をはじめ移設反対派のメディアなどは、国が「丁寧な説明」をおろそかにし、工事を強行したと主張しているが、県民からは「裁判所が法的に何度も根拠を示したにもかかわらず、それに従わない県の方が不誠実だ」との批判の声が聞こえてくる。

1月8日に県内各地で成人式が行われた際、玉城氏は新成人らへ「責任ある社会の一員となり、よりよい社会を創造する担い手として活躍することが期待されます」とメッセージを寄せたが、SNSなどでは、「法律に従わない知事が何を言っているのか」など、冷ややかなコメントが多く見られた。

暗雲が立ち込めているのは工事計画ではなく玉城県政の方なのかもしれない。

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