独自外交の迷走に県民困惑
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仕事始めとなった4日、玉城デニー知事は県庁で年頭訓示を行った。その中で、「自立型経済の構築」と「子供・若者・女性支援施策の充実」に加え、「辺野古新基地建設反対・米軍基地問題」の三つを県政の重要課題だとして、重点的に取り組むと発表した。今年4月には、玉城氏肝煎りの地域外交室が課に昇格する予定となっているが、昨年の独自外交の迷走感は拭えず、バランスの取れた運営ができるか、注目が集まりそうだ。(沖縄支局・川瀬裕也)
「万国津梁会議」が提言書 地域外交室は課に昇格へ
玉城氏は4日、県庁職員らに語り掛ける口調で、「県民が元気に笑顔で生き生きと生活し、地域、社会、産業界が 寄せる期待を実現していけるよう、皆さんと一緒に協力して取り組んでいきたい」と語った。
県政の重要課題として掲げた米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題については、「過重な基地負担の解消を引き続き政府に求めていく」とした上で、「沖縄の現状を国際社会で発信し、国境の壁を越えて連帯・協力していくという考えを共有していきたい」と語り、自身が推し進める「地域外交」を強化していく構えを示した。

県は昨年4月、玉城氏が掲げる「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」の一環で、知事公室に「地域外交室」を設置した。玉城氏は主に、経済振興や基地反対のための「独自外交」として諸外国を外遊して回ったが、一部「迷走」と揶揄(やゆ)されるほど賛否は大きく分かれた。
特に、昨年7月に日本国際貿易促進協会(国貿促)の河野洋平会長らと共に中国・北京を訪問した際、中国共産党序列2位の李強首相と面談するなど、異例の好待遇を受けたにもかかわらず、石垣市の尖閣諸島で中国海警局の艦船が領海侵入を繰り返している問題などには一切触れなかった。
それどころか、1879年の「琉球処分(廃藩置県)」前後に中国に亡命した琉球出身者ら(脱清人)の墓地を訪れ、線香を上げ手を合わせたが、これが、国内外に誤ったメッセージを発信するとして物議を醸した。
実際、玉城氏訪中の直前には、習近平国家主席が「琉球」に言及した極めて異例な発言を中国共産党の機関紙・人民日報が1面で報じるなど、玉城氏の訪中の持つ意味の大きさを表していた。
一方で11月に行った訪台では、「日本台湾交流協会」などを通して現地の沖縄県人会や留学生らと交流する程度にとどめ、政府要人や行政関係者との面談はなかった。
玉城氏が訪台を発表した翌日、在日本中国大使館が猛反発したことが原因の一つと思われるが、地域外交に偏りがあるのではとの批判が巻き起こった。
何よりも、9月に玉城氏がスイス・ジュネーブの国連本部を訪れた際に、沖縄県民を先住民族であると主張し活動するNGO「市民外交センター」と連携してスピーチを行ったことが発覚すると、県議会で野党・自民党が徹底追及するなど、波紋が広がった。
県議会11月定例会の答弁で、県の地域外交の立ち位置について尋ねられた玉城氏は「国家間の外交を補完するもの」としているが、中国に対する強い配慮がうかがわれる上に、特定の思想を持つ組織と連携して国連で情報発信を行うなど、アンバランスさが目立つこととなった。
昨年末、県の専門家会議「地域外交に関する万国津梁会議」は県の地域外交の基本方針の策定に向けた提言書を取りまとめた。この中で、県が目指すべき姿を「アジア・太平洋地域の平和構築の拠点」と位置付け、新たに「地域外交課」を設置し、海外にも連絡事務所を置くことなどを提言している。
同会議は今月下旬にも、玉城氏に提言書を提出する予定だというが、県は既に、今年4月から地域外交室を課に昇格させ、職員の数も増やす方針を発表している。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、沖縄県が独自に行う地域外交で、周辺国に対して、政府方針と異なるメッセージを伝えることがあってはならないが、基地問題などで真っ向から政府と対立する玉城氏の姿勢には危ういものを感じる。