沖縄をアジアDXの中心地に

リゾテックエキスポ・実行委員長 稲垣純一氏に聞く

 いながき・じゅんいち 県内のIT系専門学校の校長を21年間務める。一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)理事長。「リゾテックエキスポ2023 in Okinawa国際IT見本市」実行委員会委員長。一般社団法人沖縄県情報産業協会副会長。公益財団法人沖縄県産業振興公社理事。

沖縄最大級のDX(デジタルトランスフォーメーション)・IT展示商談会「リゾテックエキスポ2023inOkinawa」が9、10の両日、沖縄市の沖縄アリーナをメイン会場として開催された。各種シンポジウムが催されたほか、県内外のIT関連企業188社が参加し、商談や情報交流を行った。同実行委員長を務める一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター理事長の稲垣純一氏は、沖縄は観光などの特性を活かし「アジアのDXの中心地になる役割がある」と語る。稲垣氏に総括を聞いた。(聞き手=沖縄支局・川瀬裕也、写真も)

商談・シンポでIT推進へ

大型MICE施設整備が急務

――今回のテーマは「沖縄発!Reboot(リブート)Japan!」だ。

2020年2月に第1回リゾテックエキスポを開催したが、その直後、新型コロナによるパンデミックで経済が減速、海外との交流も止まってしまった。そこから3年間、リアル(対面)とオンラインを併用したハイブリッド形式で毎年運営を続けてきた経緯がある。

コロナ禍が明け、初心に戻り、国際IT見本市としての役割を果たすべく、沖縄からDXを世界に発信していこうと、「リブート(再起動)」をテーマに掲げた。単に沖縄の企業が市場を海外に求めたり、県外・国外企業を誘致するだけではなく、国境を越えたスタートアップ支援や人材の交流が促進されるよう各種シンポジウムや商談の場を設けた。コロナ明けの良いスタートが切れた。

会場に設置された企業ブースは多くの来場者でにぎわった=10日、沖縄市の沖縄アリーナ

――沖縄アリーナでの初開催となった。

那覇空港から見ると、(前年までの宜野湾市の沖縄コンベンションセンターと比べ)遠隔地に移ったことになるが、幸い前年とほぼ同じ来場者数(約1万人)となった。新会場は最先端ITに対応できる上、2階から5階までの通路が多面的に利用できる点が良かった。次年度以降は屋外の展示や、さらに多くのサテライト会場との連携などを強めていくことも模索している。

――今後、沖縄がIT分野に力を入れていく上で必要なことは。

中長期的には会場だ。大型MICE(ビジネス・学術イベントなど)施設の計画がようやく県議会で承認され、2029年供用開始をめどに準備が始まっている。会場ができれば、それに伴い交通網や宿泊環境も充実するため、結果的に沖縄の経済全体が発展することになる。

実際、沖縄科学技術大学院大学(OIST)もIT分野の発展に大きな成果を上げている。

もう一つは県内スタートアップに対する投資環境の充実だ。県内資本のみならず、県外・海外からの資本を呼び込むようなプロモーションが必要だ。

――沖縄でスタートアップする利点・強みは。

会場には多くの県内高校生の姿も見られた=10日、沖縄市の沖縄アリーナ

大きく二つある。一つは、観光地として沖縄が非常に優れていることだ。観光産業のDX化を発展させることで、観光に紐づく全ての産業が発展する。これは沖縄ならではの特徴だ。

もう一つは、アジアとの等距離の関係性だ。物理的な距離だけではなく、歴史的、文化的な意味で等距離な立ち位置にある。日韓関係が非常にいい状態にあることもあり、今回は韓国からの新規来場者、出展企業が増えた。沖縄は今後、他の国も含めアジア全体のDXの中心地になる役割を担える。

沖縄にアジアの人々が集まってくると、県外の行政・産業関係者が沖縄を訪れ、アジア各国の最新情報をまとめて手に入れられる。アジア企業からすれば、年に一度沖縄に行けば、日本全国に営業できる、まさにハブとしての役割も担うことができる。アジアで広く網目状の関係を構築し、全体として強靭な経済体制を発展させていくべきだ。

――沖縄はこれまで、人流・物流のハブを目指して来た。

ヒト・モノだけでなく、カネ・情報を含めたすべてが揃うデジタルのハブを目指さなければならない。沖縄は観光の中心地として人流は増えてきたが、今後はビジネス人材、スタートアップ人材のハブとしても位置付けられていくべきだ。

そこに県外・海外からの投資を呼び込むことで、沖縄の発展は、自律的なものとなっていく。そのためのエンジンの一つとして、リゾテックエキスポを位置付け、今後さらに拡大していきたい。

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