中国海警船 尖閣沖で領海侵入やまず

AIS公開で実効支配アピール

中国海警船(前方に機関砲のようなものを搭載)(海上保安庁提供)

沖縄県石垣市の尖閣諸島沖で中国海警局の艦船が18日、領海侵入した。これを受けて首相官邸は同日、危機管理センターに設置していた情報連絡室を「官邸対策室」に格上げしたが、海警船は3日間、領海侵入を続けた。また中国が尖閣諸島周辺や台湾海峡などで独自に設定する禁漁期間が16日に明け、約100隻前後の中国漁船が連日、尖閣諸島の接続水域周辺に押し寄せるなど、緊張状態が続いている。(沖縄支局・川瀬裕也)

首相官邸、情報連絡室を「官邸対策室」に格上げ

地元漁協「漁船の安全第一に」

尖閣諸島周辺の接続水域を常態的に航行する中国海警局の艦船4隻が18日午前2時ごろ、現地で操業中の日本漁船を追尾する形で立て続けに領海に侵入。日本漁船に張り付きながら67時間36分もの間領海内にとどまった末、20日午後9時ごろから9時50分ごろにかけて領海を出た。尖閣諸島沖での中国公船の領海侵入は今年に入り21件目となる。領海侵入した艦船の中には機関砲のような武器を搭載しているものも含まれており、不測の事態が発生した場合の被害は小さくないと予想されている。

この件に関して首相官邸は18日、危機管理センターに設置していた情報連絡室を官邸対策室に格上げし、情報収集と警戒監視に当たると発表。しかし、松野博一官房長官が記者会見で「(中国側に)厳重に抗議し、速やかに領海から退去するよう強く求めた」と発言するだけで、具体的なアプローチに変化は見られない。

中国海警局のAIS情報(写真右側の島が尖閣諸島)=AIS公開サイト「マリントラフィック」より、8月21日

これらの動きについて地元・八重山漁業協同組合の伊良部幸吉専務理事は、格上げしたこと自体は「好意的に受け止めている」とする一方で、「具体的な結果(中国艦船が退去するなど)が見えないため、(政府の対応についての)評価が難しい」とした上で、「地元漁船の安全な操業を第一に考えて対応してもらいたい」と注文した。

また伊良部氏は、漁解禁に伴い尖閣周辺に押し寄せた中国漁船については、「違法な操業をしない限り、具体的な被害などはない」と静観する立場を示した。

各種報道によると、中国海警局の艦船は今年3月以降、AIS(船舶自動識別装置)の信号を作動させながら尖閣周辺を航行している。AISの情報は「マリントラフィック」などのサイトに掲載され、インターネットで世界中から確認できる。

21日、実際に同サイトを確認してみると、尖閣周辺の接続水域内に「CHINACOASTGUARD2302(中国海警2302号)」の船の位置情報が確認できた。

これは先日領海侵入した4隻の中の1隻だ。尖閣周辺海域でAISを作動させることによって、実効支配を見据え、世界にアピールする狙いがあると思われる。同艦船は接続水域に入る前は意図的にAISの信号は出していない。

ちなみに現場で日本漁船を守り、海警局艦船への退去勧告や警戒監視を行っている海上保安庁の巡視船はAISの信号を作動させていない。運用体制や巡視ルートなどの情報を秘匿するための措置だというが、同サイトなどで海運データを見たとき、中国艦船のみが尖閣周辺で活動しているように外部からは見えてしまう問題がある。

尖閣周辺での中国の挑発的な動きは年々深刻さを増しており、接続水域内で中国艦艇が確認された日数は昨年336日を記録し過去最多となっている。

海保は昨年10月から偵察用の無人航空機「シーガーディアン」を導入するなど、警戒監視に力を強めている。ただ、中国側の艦船が大型化しているという指摘が専門家などから出ており、対応は急務となっている。

来年1月には台湾で次期総統選挙が行われる。これに先立ち、習近平国家主席が先月、対台湾作戦などを担う中国人民解放軍・東部戦区の部隊に「戦争に備えた任務の新局面を切り開くよう努めなければならない」と指示を出すなど、今後も尖閣および台湾周辺海域での緊張はより一層高まることが予想される。

 AIS(船舶自動識別装置) 船舶の識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他安全に関する情報を自動的にVHF帯電波で送受信する装置。船舶局相互間及び船舶局と陸上局の航行援助施設などとの間で情報の交換を行うシステム。「海上人命安全条約」に基づいて全ての船舶に設置が義務付けられている。

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