安保観の違い鮮明に 「慰霊の日」 戦没者追悼式

対話による平和外交を 玉城知事

慰霊の日で演説をする岸田文雄首相 (左 )と玉城デニー知事=6月23日、沖縄県糸満市の平和記念公園 (森啓造撮影)
慰霊の日で演説をする岸田文雄首相 (左 )と玉城デニー知事=6月23日、沖縄県糸満市の平和記念公園 (森啓造撮影)

安保環境は厳しく複雑 岸田首相

独自の「地域外交」も中国偏重

「沖縄慰霊の日」の6月23日、沖縄全戦没者追悼式が開催された。南西諸島への自衛隊強化を懸念し、東アジアを中心とした独自の平和外交を行う玉城デニー知事と、地域の安全保障のために一定の抑止力が必要だとし、日米安保の深化を目指す岸田文雄首相との違いが鮮明になった。(沖縄支局・川瀬裕也、豊田 剛)

「昨年12月に閣議決定された『国家安全保障戦略』、『国家防衛戦略』および『防衛力整備計画』においては、沖縄における防衛力強化に関連する記述が多数見られることなど、苛烈(かれつ)な地上戦の記憶と相まって、県民の間に大きな不安を生じさせており、対話による平和外交が求められている」

追悼式の主催者メッセージである「平和宣言」で玉城知事は、昨年12月に閣議決定された安保3文書が沖縄戦を想起させるとして、政府の防衛力強化を牽制した。

その上で、知事は「アジア太平洋地域における関係国等による平和的な外交と対話による緊張緩和と信頼醸成、そしてそれを支える県民・国民の理解と行動が、これまで以上に必要」になると強調。

「アジア太平洋地域における観光、経済、環境、保健・医療、教育、文化、平和など多分野にわたる国際交流を通じて、沖縄県が築いてきたネットワークを最大限に活用した独自の地域外交を展開」することで、地域の平和構築に貢献できるとした。

岸田首相は来賓あいさつで、ウクライナ情勢や中国の軍拡、北朝鮮のミサイル開発を念頭に「安全保障環境は戦後最も厳しく、複雑な状況にある」と述べた。県民感情に配慮してか、自衛隊の増強については触れなかったが、知事との安全保障政策は対極をなす。

式後の記者会見では、「外交をしっかり進める」としながらも、南西諸島の防衛力強化や日米同盟の抑止力を向上させることで「武力攻撃の可能性を低下させる」と述べ、抑止力の重要性を強調した。

これに対し、知事は9日、敵基地攻撃能力を有するミサイルを県内に配備しないことや、自衛隊配備は米軍基地の整理縮小を前提とすることなどを盛り込んだ要請書を政府側に手渡した。

県は今年4月、防衛力によらない平和維持を目指し、庁内に「地域外交室」を新設した。ただ、これまで知事が目を向けているのは中国や韓国など東アジアばかりだ。3日~6日には、日本国際貿易促進協会(国貿促)の訪中団の一員として北京を訪問した後、福建省に足を運ぶ。

追悼式が始まる直前、知事は首相と平和祈念公園内で面談した。その際、「地域外交は、沖縄の良さを発信していくのに非常に良いのではないかと言ってもらえた。県の取り組みを理解してもらえた」と話した。ある野党系の議員は、「『聞く力』を豪語する首相の単なるリップサービスだと分かっていないのでは」と揶揄(やゆ)した。

=台湾出身の戦没者を慰霊=

=日台関係者ら約70人参列=

糸満市摩文仁の沖縄県営平和祈念公園にある台湾出身戦没者慰霊碑「台湾之塔」で6月24日、「第11回台湾出身戦没者慰霊顕彰祭」が一般社団法人・日本台湾平和基金会(西田健次郎理事長)の主催で行われ、日台の関係者ら約70人が参列した。

顕彰祭には台湾の退役軍人らでつくる「関懐台籍老兵文化協会(台湾老兵協会)」の朱家煌理事長や、日台友好のため活動する「台日交流高座之友会」の何敏豪会長が参列したほか、台湾の外務省にあたる外交部から蘇嘉全・台湾日本関係協会会長、台湾の在日領事館にあたる台北駐日経済文化代表処・那覇分処の王瑞豊処長(総領事)らも出席した。

日本側からは、主催者の西田理事長のほか、衆議院議員の國場幸之助国防部会長、沖縄県議の又吉清義氏や、日本李登輝友の会支部長を務める大浜一郎氏(県議)らが出席。参列者は台湾出身戦没者の御霊(みたま)を慰めた。

太平洋戦争当時、日本統治下に置かれていた台湾からは約20万人が戦争に動員され、約3万人が命を落としたとされている。同公園内の平和の礎(いしじ)には34人の名前が台湾出身戦没者として刻まれている。台湾からの参加者は、「沖縄で散華(さんげ)した台湾人はもっと多い。実相をしっかり反映させてほしい」と沖縄県側に注文した。

また23日には、前夜祭として、晩餐会「日台交流の夕べ」が同市内のホテルで開かれ、参加者らは互いに親睦を深めた。

(写真は読者提供)

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