日本国際貿易促進協会(国貿促、会長・河野洋平元衆院議長)の一員として中国を訪問中の玉城デニー知事は、北京で政府要人と面会している。玉城氏が国貿促の訪中団に参加するのは2019年以来、2回目。台湾海峡の情勢が緊迫した中での訪中だが、玉城氏が中国の思惑通りの言動をしないか県議会野党などから警戒感が高まっている。(豊田 剛)
沖縄県によると、玉城氏は3日、北京の中国国際空港を訪問し、職員と面会。コロナ禍前までの沖縄就航に感謝を伝えた上で、ビザが緩和された際の中国路線再開に向けた検討を依頼した。4日には北京市郊外の「琉球国墓地」を訪れた。5日は、中国の国有複合企業、中国中信集団(CITIC)の本社を訪問。中国の指導部のメンバーと会談する。6日に福建省福州市を訪れた後、7日帰国する。
焦点となっているのは、どのレベルの要人と会い、どんな話をするかだ。面会相手は直前まで明らかにされないことになっているが、前回の訪中では、胡春華副首相(当時)と面会し、中国が提唱する巨大経済圏構想「一帯一路」について「沖縄を活用してほしい」と提案した。
訪中に先立ち、照屋義実副知事が3月末、呉江浩駐日大使と面会した。会談は非公開だったが、面会の際、沖縄に中国との交流窓口を設置する可能性に触れたとされ、一部警戒感が高まっている。
石垣市の尖閣諸島周辺で中国海警局の船が領海侵入を繰り返すなど、尖閣を巡る中国の挑発行為がエスカレートしているが、玉城氏はこの期間、触れない方針。「訪中の主な目的は経済、文化の交流促進であり、外交や安全保障は国が対応すべき」(県当局)という考えだ。
訪中の在り方については県議会でも激しく議論されている。一般質問で自民県議から「訪中時に(中国の要人から)『尖閣は古来、中国の領土だった』と言われたらどう対応するつもりか」と問われた玉城氏は、「いろいろな対応があると思うが、発言しないことも一つの対応。即答しないことも検討したい」と答弁した。4年前の記者会見では、尖閣周辺で中国海警局(海保に相当)の船が日本漁船を追い回した件で、「中国公船がパトロールしているので故意に刺激することは控えなければならない」と述べ、批判を受けて撤回した経緯がある。度重なる中国寄りの言動に、県民・国民の不信感は募るばかりだ。
こうした中、中国共産党機関紙・人民日報の傘下の環球時報は3日、玉城氏の書面インタビューを掲載した。玉城氏は「沖縄と中国の長い交流の歴史を温め、より深い交流の機会にしたい」とした上で、県が4月に新設した地域外交室では「外務省と意見交換しながら、沖縄独自の地域外交を展開していく」と話した。

同紙は、ロシアのウクライナ侵攻以降、台湾有事を日本有事と結び付ける論調が日本国内にあることを触れた上で、日本政府が進める南西防衛強化について「軍事力増強で抑止力を強めようとするやり方は地域の緊張を激化させ、予測不可能な事態を引き起こしかねない」という玉城氏のコメントを紹介した。「中国のプロパガンダに利用されてはならない」という野党系県議の警告は玉城氏に届かなかったようだ。