北朝鮮衛星の落下に備え 先島へのPAC3配備に遅れ

PAC3が配備された与那国駐屯地(豊田剛撮影)

港湾・空港、円滑使用できず

防衛省・自衛隊は、北朝鮮が打ち上げを計画する人工衛星の日本領土内への落下に備え、沖縄県の石垣島や与那国島など先島諸島に航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)等の配備を進めている。しかし、港や空港の使用許可などを巡る県の対応により輸送に遅れが生じている。配備先の与那国町長などからは、県に対し積極的に配備に協力するよう求める声が上がっている。(沖縄支局・川瀬裕也)

「県のせいで国防が崩壊」

与那国町長、早期使用許可求める

浜田靖一防衛相は4月22日、北朝鮮の衛星落下事態に備え、破壊準備措置命令を発令した。2012年と16年に北朝鮮が「人工衛星」と主張する飛翔(ひしょう)体を発射し、沖縄上空を通過した際に迎撃ミサイルが一時的に県内に展開されたが、それ以来の動きとなる。

北朝鮮は詳しい発射時期や方角を明らかにしていないが、過去の発射履歴や情報収集に基づき、防衛省は同様のコースである沖縄方面に発射する可能性があるとみている。飛翔体について北朝鮮は「人工衛星」と主張しているが、過去4度の打ち上げはいずれも事実上の弾道ミサイルであったと見られている。

記念行事で披露されたPAC3=22年11月6日、沖縄県那覇市の那覇駐屯地(豊田剛撮影)

23日、石垣駐屯地と与那国駐屯地から配備計画が開始された。しかし24日、防衛省が那覇港管理組合などに海上自衛隊の輸送艦「しもきた」を接岸させるため、那覇港新港ふ頭の使用許可を打診したところ、民間の貨物船で埋まっており受け入れ困難だとして、入港できなかった。

同省は中城湾港においても同様の打診を行ったが、こちらも空きがないとして許可がでなかった(後に別の自衛隊輸送艦が入港)。これに伴い同省は、輸送計画を急遽(きゅうきょ)変更。輸送手段を自衛隊の輸送機や民間の貨物船に変更するなどして対応した。

糸数健一・与那国町長(豊田剛撮影)

しかし混乱は続いた。同日、同省が県に対し、25日午前1時ごろの新石垣空港の使用許可を打診したところ、県側は空港の運用時間外であることを理由に却下。宮古空港についても、混雑を理由に、申請時の予定時間から約10時間遅れての到着となった。

また海上輸送に関しても問題が生じた。同省から依頼された民間事業者の貨物船が与那国島の祖納港で車両を陸揚げしたことに対し、同事業者が県港湾管理条例に基づく岸壁使用許可申請を出していなかったことが判明し、配備反対を主張する市民団体らの批判の声がさらに強まることとなった。

これらの動きに不満を唱えるのが与那国町の糸数健一町長だ。糸数氏は25日、報道各社への取材に応じ、自衛隊の港湾・空港使用に対する一連の県の対応について、「今回は特にひどいと感じている。(自衛隊に)対抗しているようにしか見えない。こんなことをやっていたら国防が県のせいで崩壊する」と猛烈に批判。「必要に応じて(港湾・空港の)使用許可を速やかに出してほしい」と県に訴えた。

さらに糸数氏は、PAC3について「できれば撤去・撤収しないで、そのままこの島に置いてほしい。いつでもすぐ即時に対応できるように」とも述べている。

これらのニュースを聞いた那覇市の30代男性は、「北朝鮮がいつミサイルを打つか分からないのに、配備に非協力的な県の態度は県民の命を軽んじているのでは」と不安を口にした。

玉城デニー知事は27日の会見で、批判の声が上がっていることについて、「岸壁が予約で埋まっていたこと、時間外の(空港の)緊急使用についての確認に時間を要したことについて、意図して遅れや抵抗をしたものではない」と否定。「県民の不安や県民生活への影響が広がることがないよう、迅速かつ適時の情報提供を行うよう(国に)要望している」とした上で、「情報収集を行いながら、適切に対応していきたい」と述べた。

またPAC3については、「県民の生命や財産の安全を確保するため万全の措置を取る必要があることには一定理解をしている」との認識を示した。

反米・反基地を掲げ当選した玉城氏だが、一方で県民の生命と財産を守る責任のある立場に変わりはない。万が一、実際に有事となった場合、今回のような混乱や輸送計画の遅れが生じることはありはしないか、懸念は残されたままだ。

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