トップ国内陸自・石垣駐屯地開設 南西諸島防衛の「空白」解消

陸自・石垣駐屯地開設 南西諸島防衛の「空白」解消

陸上自衛隊石垣駐屯地=16日(陸自西部方面隊提供)

陸上自衛隊石垣駐屯地が16日、同市に開設された。地対空・地対艦ミサイル部隊などが配備され、南西諸島防衛がさらに強化された。17日には県庁で国民保護訓練が実施されるなど、有事への備えは高まりつつある。一方で駐屯地周辺では反対派による抗議活動が続いており、同日の市議会では共産党市議が自衛官を差別する旨の発言を行い、撤回を求められる一幕があった。(沖縄支局・川瀬裕也)

共産市議が自衛官差別発言

「人権尊重」決議、市議会で採択

政府は、中国の軍事的海洋進出が進む南西諸島において、陸自部隊がないことによる離島防衛の「空白」を埋めるため、これまでに同県与那国島と宮古島、鹿児島県の奄美大島に駐屯地を開設してきた。石垣駐屯地の開設は、一連の南西諸島における防衛力強化計画の最終段階だ。

16日、同駐屯地では「八重山警備隊」の編成完結式が行われた。陸自トップの吉田圭秀陸幕長は同日、「南西地域の空白を埋めることが完了した」と評価した上で「南西防衛体制の強化はまだまだ途上だ」と、さらなる抑止力強化の必要性を語った。

陸上自衛隊石垣駐屯地の開設式に臨む駐屯地司令の井上雄一朗1等陸佐=16日(陸自西部方面隊提供)

石垣駐屯地には、八重山警備隊に加え、地対空・地対艦ミサイル部隊など、合わせて約570人が配置された。南西諸島防衛において、制空権を左右するこれらのミサイル部隊の果たす役割は大きく、離島防衛の要としての活躍が期待されている。

また17日には、県庁で、他国からの武力攻撃を想定し、石垣や与那国など先島諸島の住民を九州に避難させる国民保護図上訓練が初めて行われるなど、有事への備えが一歩ずつ進んでいる。

自衛隊への差別発言を行った共産党・井上美智子市議=17日、石垣市議会ユーチューブより

一方で、駐屯地付近では連日、反対派グループらによる抗議活動が続いている。18日には、ミサイルなどの弾薬を搬入する車両の通行を妨害しようとした反対派らが、石垣港で警察官に排除された。

抗議活動参加者の持つプラカードの中には、韓国語で書かれたものや、翻訳機にかけられたような違和感のある日本語のものも見られた。また地元メディアの取材に応じた女性が「神奈川から来た」と語る場面もあり、反対派の中には地元住民以外も多く含まれているようだ。

そのような中、17日の石垣市議会で、共産党市議が基地反対を訴える中で、自衛官への差別とも取れる発言を行った。定例会で一般質疑に立った井上美智子市議は、自衛官が「迷彩服でバイクに乗ったり、自転車に乗ったりしている姿がある」とし、「町の中では迷彩服で歩かないでほしいという要望もある」と発言した。この発言に対し、長山家康市議(自民)が「明らかに職業差別に当たる」とし、発言の撤回を求めるよう我喜屋隆次議長に提言した。

これを受け、20日の同市議会で、「陸上自衛隊石垣駐屯地開設に伴い、自衛隊やその家族及び、駐屯地関係者の人権を尊重する決議」が採択されたが、井上市議は発言を撤回することなく途中退席した。

国土防衛という重責を担う自衛官とその家族の人権が尊重されることは当然だ。普段から労働者への不当な差別を許さず、労働環境の待遇改善などを訴える共産党の市議が、自衛官の労働を妨げる差別発言をしたことは大きな問題であり、基地反対のためであれば人権をも蔑(ないがし)ろにする姿勢の現れだと言わざるを得ない。

辺野古移設訴訟で敗訴 県、上訴する構え

知事の「時間稼ぎ」との声も

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画について、防衛省が申請した設計変更を県が不承認とした処分を巡り、国土交通省が県の不承認を取り消し、承認するよう是正指示を出したことは違法であるとして、県が国交省を相手取り、裁決と是正指示の取り消しを求めた訴訟の判決が16日、福岡高裁那覇支部(谷口豊裁判長)であった。

判決はいずれも、県の訴えを退ける結果となった。

判決では、裁決について「国の関与には当たらない」としており、是正指示については、県の不承認について「裁量権の逸脱や乱用がある」と訴えを棄却した。

判決後、玉城デニー知事は、「2件の判決には到底納得できない」と不満を示し、「上訴に向けて判決内容を精査していくと」と語った。

この件について、地元紙などは、「地域住民の利益を守るための自治体の裁量が否定された」「司法の中立性が問われる」などと、批判する論陣を張っているが、県民からは冷めた声も聞こえてくる。

那覇市の60代女性は「工事の遅延と税金の無駄遣いだ」と批判。浦添市の70代男性は「(裁判は)玉城氏のただの時間稼ぎだ」と断じた。

辺野古移設阻止を公約に掲げ再選を果たした玉城氏は、今回の敗訴でより一層追い詰められた形となった。

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