トップ国内那覇市長に保守系の知念覚氏

那覇市長に保守系の知念覚氏

オール沖縄系市長ゼロに

那覇市長選で勝利し、現市長の城間幹子氏(左)から手作りバトンを受け取る知念覚氏=10月23日午後、那覇市(森啓造撮影)

沖縄の「選挙イヤー」を締めくくる那覇市長選は、自公勢力が推す知念覚氏が当選した。今年行われた七つの市長選で「オール沖縄」勢力が敗北。2014年の知事選で一部の保守勢力や経済界を巻き込んだ「オール沖縄」は単なる革新共闘でしかなくなっている。(沖縄支局・豊田剛、川瀬裕也)

選挙イヤー 7市長選で敗北

玉城知事、自公への歩み寄りも

那覇市は、かつて翁長雄志氏が4期の途中まで市長を務めた。14年に知事選に出馬して以来、同市ではあらゆる選挙で「オール沖縄」勢力が勝利してきた。那覇市を中心とする衆院沖縄1区は全国で唯一、共産党が選挙区の議席を保持。今年行われた参院選と知事選でも革新候補の得票が保守票を大きく上回り、革新の「牙城」とまで言われた。

那覇市長選で敗北が確定し、あいさつする翁長雄治氏(中央)とうなだれる玉城デニー知事(前列左)=23日午後、那覇市(森啓造撮影)

そんな那覇で、しかも翁長雄志氏の次男が擁立されるとなれば、知名度で圧倒している雄治氏が有利と見られていた。知念選対のある幹部は、「相手は祖父の代から続く政治家一族。『翁長』という名前を書き慣れている市民は多く、知名度をどう克服するかが課題だ」と話していた。

雄志氏が絶大な信頼を寄せて後継者指名をしたのが城間幹子氏。2期で勇退することを決めた城間氏が誰を後継とするかが、勝敗を決める大きな要因となった。雄志氏を保守の側から支えていた元副知事2人や下地幹郎前衆院議員の有力な支援者など、非自公の保守系勢力も、選対本部とは別の選挙事務所を構え、自公を支持しない無党派層の取り込みや革新票の切り崩しを図った。

10月23日午後11時ごろ、当確報道が出ると、知念氏は「知名度が低い私をここまで押し上げてもらい、心より感謝したい。私は次(仕事)のことしか考えていない」と述べた。市役所職員として38年間を過ごしたからこそのコメントだ。

これで、今年投開票された7市長選はすべて自公の候補が制した。中でも南城、豊見城、那覇の3市はオール沖縄勢力から自公が市政を奪還した。この結果、11市のうち、9市が保守市政となった。残る糸満と宮古島の両市長はオール沖縄の支援を受けて当選しているものの、県政に対して是々非々の態度を取っており、実質オール沖縄系市長はいなくなった。

知念氏にバトンを渡した城間市長は、「(知念氏が)推薦を受けた自民・公明の懐に入って、今後どう考えていくのか見ていきたい。沖縄の大事な基地問題は辺野古だけではなく那覇軍港もあり、辺野古はもちろんのこと沖縄県が抱えるさまざまな課題に対して、真摯(しんし)に国と向き合ってくれると思う」と述べた。イデオロギー重視のオール沖縄との決別宣言に等しい。

当確を受け、国場幸之助衆院議員は、「38年間の市役所勤務、8年間の副市長としての経験や、あらゆる政策に精通していること、また自公の推薦や城間市長も支援したことが勝利の要因だ」とした上で、「相手候補は、イデオロギー的な、オール沖縄の枠組みに肩入れし過ぎた部分が、市民をないがしろにしているという懸念として有権者の判断につながった」と分析した。

公明党沖縄県本部の金城勉本部長(県議)は、「那覇市長選でわれわれ(自公)が勝てたというのは本当に大きな意味がある。那覇軍港の移設のスムーズな進捗を強く押し出し、跡地利用もしっかりとやってくれることを期待したい」と述べた。

翁長雄治氏は敗北の弁で、今後の予定は「未定」として、城間市長が知念氏を支援した影響は「あったんでしょう」と嘲笑気味に語った。翁長氏は、オール沖縄勢力では目下、最も存在感のある政治家。選挙イヤーの今年は、各市長選や知事選、参院選など主要選挙でマイクを握る機会が多く、国会議員以上に存在感を示していた。オール沖縄は「ホープ」を擁立して落とした衝撃は大きい。れいわ新選組の山本太郎代表は応援演説で「雄治さんは将来の総理大臣候補」とも持ち上げたほどだ。

オール沖縄勢力は、参院選と知事選、県議選補選(那覇市区)を制しており、「4連勝を」と意気込んでいた。ただ、参院選と知事選はいずれも保守勢力が分裂した選挙であり、「一騎打ちであれば勝敗の行方はどうなったか分からなかった」(自民党県連幹部)。

オール沖縄勢力が那覇で敗北したことで、玉城知事は保守系市長に包囲される状況となった。名護市では、県を通さない形で補助金を受け取っており、振興策では県の存在感が薄くなっている。那覇軍港の浦添埠頭への移設でも、早期移設に向けて那覇と浦添両市が知事に圧力をかけてくることが予想される。主な支持母体である共産、社民、立憲民主の各党の意のままに、辺野古移設で国と対立を続けることに限界が来ており、自公への歩みよりも必要になってくるであろう。

ある観光関連企業の役員は、「玉城県政だから協力しないということはない」と話し、政府との関係修復を求めている。10月に2期目を迎えるや否や、正念場に立たされた玉城県政に求められているのは、革新勢力に配慮し過ぎた政策から軌道修正し、政府との信頼関係を取り戻し、実効性ある経済振興策を展開することだ。

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