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沖縄方言の使用頻度が大幅低下

県文化観光スポーツ部が意識調査

中学校で使われる教材「しまくとぅば読本」(写真左)。あいさつの冒頭でしまくとぅばをよく使う玉城デニー知事(同右)

文化伝承に普及必要が過半

「県民の郷土愛喪失を危惧」

沖縄県文化観光スポーツ部はこのほど、2021年度の「しまくとぅば県民意識調査」の報告書をまとめた。しまくとぅばは、沖縄方言を指す。この調査では、しまくとぅばの使用頻度がわずか1年で顕著に減少していることが分かった。普及のために教育が必要だという意見が主流を占めるものの、授業での学習については否定的な意見が目立っており、普及には課題を残したままだ。(沖縄支局・豊田 剛)

他の科目「削ってでも」は否定的

沖縄県では、「しまくとぅば」の普及継承を重点施策と位置付け、2013年度に、「しまくとぅば普及推進計画(10カ年計画)」を策定し、普及継承に取り組んでいる。

県は「『しまくとぅば』は、地域の伝統行事等で使用される大切な言葉であるとともに、組踊や琉球舞踊、沖縄芝居等といった沖縄文化の基層となる言葉である」と説明。しまくとぅばに関する調査を行うことで、その実態を把握し、今後のしまくとぅばの普及に向けた課題と効果的な普及方法を検討することを目的としている。

調査対象は県内在住の18歳以上で、今年2月から3月にかけて約1カ月間調査を行い、2830件の回答を得た。新型コロナウイルス感染症対策のため、従来の面接調査ではなく郵送やウェブサイトで行った。調査の結果、しまくとぅばの使用頻度に対する回答で「主に使う」「共通語と同じくらい使う」「挨拶程度使う」を合わせた「使う」の割合が過去最低の28・6%となった。前年度調査から14・6ポイントの大幅減となり、若い世代を中心にしまくとぅばを話す人が減っている現状が浮き彫りとなった。

使用頻度の質問で「使う」と回答した割合を年代別で見ると、年代が上がるにつれて高くなり、70歳以上は39・0%で最も高かった。最低は10代の20・7%だった。

「使わない」理由について、若年層は「分からない」「使う機会・習慣がない」「親も使ってないから」など、使う機会が少ないことが分かった。使用については「年配の方が使うイメージ」、「けんかの時に使う」というネガティブなイメージも目立った。

しまくとぅばを理解する人の割合は話し手よりも多い傾向にある。「よくわかる」「ある程度わかる」を合わせた割合が前年度比14・9ポイント減の55・3%だった。年代別では70歳以上の81・9%が最高で、10代が31・6%と最も低い。

ただ、しまくとぅばには一定の役割があるとの考えが多数を占める。普段の生活の中での必要性について、「非常に必要」「ある程度必要」という回答は、61・9%と半数を超えたが、前年度から13・6ポイントも減った。必要な理由として「沖縄の大切な文化だから」「伝統継承」「生まれ育った所の言葉だから」など、文化として重要という回答が目立ったものの、生活に必需と認識する割合は少なかった。

教育現場でどう扱うか議論が続いている。しまくとぅばの普及に必要なこととして、「学校の総合学習等での実施」が49・9%と最も多い結果が出た。その一方で、学校の授業科目に「しまくとぅば」を加えることについては消極的な意見が多かった。

「他の教科の授業を減らしてでも、是非、加えてほしい」という考えは11・7%で、「まったく加えなくてもよい」は15・9%。過去の調査よりも教育現場での活用を求める意見は減少した。

また、2014年12月に翁長雄志県政が誕生して以来、県庁ではしまくとぅばが意識的にあいさつで使用されるようになったが、県民は公的な場での使用について支持していない。「官公庁等でのしまくとぅば使用」を支持する割合は11・5%にとどまった。

総括では「しまくとぅばが失われると、県民の郷土愛も失われ、沖縄文化の衰退へとつながるものと危惧される」と危機感を示した。今後に向けては「学校での学習が子供のうちからしまくとぅばを意識させるためにも重要だと言える」と指摘。「しまくとぅばに親しみを感じてもらうことができるかが重要となる。そのためにも一層、しまくとぅばと接する機会を創出するなど、普及の取り組みを推進する必要がある」とした。

識者の意見も紹介した。那覇市文化協会うちなーぐち部会長の名嘉山秀信さんは「言語は文化遺伝子と言われる。しまくとぅばが消えると沖縄文化も希薄になるのではないか」と危惧した。

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