参院選公示まで1週間
7月10日に投開票が見込まれる参院選の公示まで1週間となった。玉城知事を支える革新系「オール沖縄」が支援する現職の伊波洋一氏(70)=無所属=と、政権与党が擁立する元総務官僚で新人の古謝玄太氏(38)=自民公認、公明推薦=の事実上の一騎打ちとなる模様だ。9月に予定される知事選を占う前哨戦としても大きな意味を持っている。(沖縄支局・豊田 剛)
自公 しなやかで強い経済を
革新 辺野古移設に強く反対
現在、沖縄県選挙区選出の参院議員は伊波氏と高良鉄美氏(無所属)の2人だ。いずれも共産、社民、沖縄社会大衆などの革新政党が推薦した。
過去3回の参院選の結果を見ると、2013年から革新勢力が3連勝している。04年までさかのぼると、7回の選挙で現衆院議員の島尻安伊子氏が2回当選したのを除くと、革新系が5勝と分がある。
参院選連勝の勢いを保ちたい「オール沖縄」は、現職の伊波氏を擁立し、16年参院選に続いて2期目の当選を目指す。6年前の前回は自民候補に10万票以上の差をつけて圧勝した。米軍属による女性暴行殺人事件が発生した直後に選挙を迎えたことから、反基地感情が極度に高まり、世論が「オール沖縄」を支持した。
それでも、今回は伊波陣営に危機感がある。「前回の結果は参考にならない。相手は若さをアピールしてくる。こちらもチャレンジャーの精神で取り組まないといけない」。伊波氏を支援する革新系県議はこう気を引き締める。
伊波氏は今回も基地問題を重要政策に据える。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設については強く反対。米軍施設から有害物質PFAS(有機フッ素化合物)が流出し、水質が汚染されている問題を受け、問題解決を目指すとしている。
新人の古謝氏の最大の武器は若さと行動力だ。3月に擁立が決まると、沖縄本島から離島までくまなく訪問し、無名の新人というハンディを払拭(ふっしょく)すべく全県を駆け回っている。東大卒で、総務省官僚としての経験や実行力をアピール。無党派層が多い若年層に浸透しつつあり、従来の保守層を超えた支持の拡大を狙う。
6日、政策発表した古謝氏は、「しなやかで強い経済」を目指し、沖縄の魅力や特徴を全面に出した多様な産業振興を掲げた。これまでの沖縄経済を象徴してきた「3K産業(観光、公共事業、基地)」に対して、観光、健康、環境、海洋、起業を促進する「新5K経済」を提唱。外的変化の影響を受けにくい強い経済を実現するとした。
古謝氏が辺野古移設容認を明言したことで、両氏の立場が明確となった。前回19年や13年の参院選では自民公認候補が辺野古移設容認を明言せず、争点が分かりにくくなっただけでなく、争点隠しとの批判があった。
伊波陣営幹部の男性は、「争点がはっきりしたことで、議論がしやすくなった」と歓迎。「『新基地建設』反対の民意は根強く、全県選挙では追い風になる」と意気込む。
一方、古謝陣営幹部は、新型コロナウイルス感染の影響で疲弊した経済再建を求める声が高まっていることで、辺野古問題への関心は低下していると指摘。「基地問題で国と争うのではなく、(経済や基地問題を)前に進めたいという声が浸透していると感じる」と期待を込めた。
14年に「オール沖縄」が誕生して以来、自公勢力は昨年の衆院選で初めて、全県規模の選挙でオール沖縄の総得票数を上回った。それも好材料だ。
8月25日告示、9月11日投開票の県知事選の投開票まで、3カ月を切った。4年前の前回と同様、「オール沖縄」が支援する現職の玉城デニー氏(62)と、政権与党の自民党県連が擁立する前宜野湾市長の佐喜真淳氏(57)が対決する構図が確定的だ。選挙イヤーの天王山である知事選の行方を占う意味でも、重要な選挙となる。
メモ
第25回参院選沖縄県選挙区結果
(2019年7月21日)
高良鉄美 無所属 新 298,831票
安里繁信 自民 新 234,928票
玉利朝輝 無所属 新 12,382票
磯山秀夫 NHK党 新 11,662票
第24回参院選沖縄県選挙区結果
(2016年7月10日)
伊波洋一 無所属 新 356,355票
島尻安伊子 自民 現 249,555票
金城竜郎 幸福実現 新 9,937票