選挙イヤー、天王山に向け始動

選挙イヤーの沖縄。9月4日の沖縄県知事選に向け、県政野党の自民は今月内にも候補者を選定する方向となった。知事選に次いで行われる県庁所在地・那覇の市長選では、現職の城間幹子市長が不出馬を表明。保革両陣営の候補者選びの動きが活発になっている。(沖縄支局・豊田 剛)
城間氏は那覇市長選に不出馬
「オール沖縄」の終焉か

選挙イヤーの前半は自民が連戦連勝となっている。直近では4月24日の沖縄市長選で自公が推す桑江朝千夫市長が大差をつけて3選を果たした。
沖縄は同市長選が終わるや否や、知事選に向け動き出した。
9月の県知事選挙に向け、自民党沖縄県連(中川京貴会長)は1日、県内政財界などの26人で構成する候補者選考委員会を立ち上げ、那覇市内で初会合を開いた。その際、委員長に選任された松本哲治浦添市長が5月中に候補者を決定する方針で了承を得たと報告した。
また、選考委員会とは別に、松本委員長と副委員長で沖縄県商工会連合会の米須義明会長、西銘恒三郎北方・沖縄担当相、中川県連会長、島袋大県連幹事長の5人で構成する幹事会を設けた。実質、この5人が知事候補の最終選考に携わることになる。
島袋氏は記者会見で、候補者選考に際し、強い沖縄経済の実現に向け、「政府と協調・協力しながら産業振興、基地跡地利用、人材育成などの沖縄振興策を総合的、積極的に推進していくことに加え、県民の心を一つにして政策を実現できる強い人物」であることを条件にすると説明した。
玉城デニー知事はまだ明言していないものの、再出馬が既定路線だ。自民は「現職に勝てる候補」の選定に待ったなしの状況だが、宜野湾市議団や同市の経済団体は佐喜真淳前宜野湾市長に出馬要請をした。佐喜真氏は「正式に決定すれば全力で取り組む」と意欲を示す。
知事選に次いで沖縄の政局を占う大きな選挙が那覇市長選だ。
任期満了に伴い、10月23日に行われる選挙から約半年前のタイミングで、オール沖縄勢力が推してきた現職の城間幹子氏(71)が出馬しないことを発表した。2日に記者会見を開き、「これからの50年、100年を考え、新たなリーダーに那覇市を支えていってほしい。後進に道を譲りたいと考えた」と説明した。
城間氏はここ1年の間、意欲面で迷いを感じたことを明かし、「変化にチャレンジするその力は、次世代に発揮してもらうほかない」と不出馬を決断した。
後継者については、現時点で誰かを指名することはないとした。ただ、知念覚副市長を推す声が保革両陣営から起きている。知念氏について城間氏は「私の2期8年、共に歩んできた。名前が出ていることは承知しているが、私の方で判断を申し上げることはない」と述べた。
その上で、「自公勢力とオール沖縄の1対1の構図は、那覇市ではなくても良いのではないかと思っている。自公政権か『オール沖縄』か、どちらかを選ばなければならないという形よりは、いろんな考えの方々が手を上げ、市民に選んでもらう環境がつくれたら」と述べ、複数の立候補を望む考えを示した。
城間氏の発言から「オール沖縄」と自公の対立構図に終止符を打ちたい考えも透けて見える。城間氏は翁長雄志元知事が那覇市長時代、後継者に指名した人物だ。
知念氏は与野党ともに次期市長として秋波を送っている人物だ。市議会の自民会派は知念氏を第一候補として知念氏の擁立を考えている。粟国(あぐに)彰会派長は、「知念氏は自民からは出てもらえると考えているが、革新共闘の候補としては出馬しない」と分析。与野党ともに知念氏が有力候補となると、自公が推す候補に革新が相乗りするという構図になる。従来の選挙構図に変化が生じる可能性も出てきた。自民党県連幹部は、「翁長氏の唯一の正当な後継者だった城間市長が不出馬を決めたことで『オール沖縄』は終わりを告げた」と冷ややかな見方をする。
また、糸数慶子元参院議員の娘でNPO代表を務める糸数未希氏が今年3月、複数の団体から出馬要請を受けている。ただ、未希氏は態度を明らかにしておらず、「オール沖縄」としては出馬しないという見方が有力だ。