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9条改正の原点を忘れるな


編集局長代理・政治部長 早川一郎

 与党・安倍政権に国民は信任を与えた。憲法改正勢力も、民進党から選別された保守勢力・希望と維新を加えると改憲発議に必要な3分の2(310)を超えたことで、衆参両院の憲法審査会での論議が加速する見通しとなった。丁寧な議論を精力的に積み上げ、改憲に向けて着実に歩を進めていくべきである。

 新たな課題は、改憲勢力の中でどの条項の改正論議を優先させるかの順位の調整だ。首相が「国難突破解散」と命名し、「北朝鮮問題への対応について信を問いたい」と語ったが、北朝鮮の核実験やミサイル発射はかつてない重大かつ差し迫った脅威である。その対処には安保法を踏まえた米国との信頼性向上とともに自衛隊の役割強化が不可欠だ。

 その自衛隊の根拠規定を憲法に定めたいとする自民党の主張は当然である。公明党は「衆参両院の憲法審査会で議論を促進する」との姿勢を示したが、かつて9条の「加憲」を表明していた論拠に立ち返って議論に参加すべきである。

 改憲政党は選挙戦が終わった今、国会内だけでなく、国民投票の主役である国民への啓発運動にも立ち上がるべきだ。特に「国民の幅広い理解を得て、憲法改正を目指す」ことを公約した自民党が年内の改憲案提出に向け調整を加速するのであれば、なおさら「9条改正」の先頭に立ち、機運醸成に本腰を入れなければならない。

 自民党が勝利したことで、安倍首相は求心力を回復し政権の態勢立て直しに弾みがついた。来年9月の党総裁3選にもつながる意味があろう。ただ、長く続けることが目的ではない。政治家になる原点に据えていた憲法改正に今こそ、政治生命を懸けて臨む覚悟が必要だ。そのためにも、おごりや緩みは禁物である。そこを注目している多くの国民の目がさらに厳しくなることを忘れてはならないだろう。

 少子高齢化をはじめ、税制、予算・規制改革などを総動員した生産性革命、人づくり革命、財政健全化など懸案は山積している。「築城3年、落城1日」の緊張感と胆力を持ち、原点を再確認して国政のかじ取りに対処してもらいたい。