世界日報 Web版

首相国連演説、対北包囲網強化を主導せよ


 安倍晋三首相は国連総会の一般討論演説で「北朝鮮は今や、平和に対する公然たる脅威としてわれわれの正面に現れた。今まさに、国連の存在意義が問われている」と強調し、核実験や弾道ミサイル発射を強行する北朝鮮を痛烈に非難して国際社会の一致した対応を求めた。

無法ぶりと脅威を訴える

 これまでの首相の一般討論演説は北朝鮮問題について一部で触れるにすぎなかったが、今回は演説の3分の1強を当て、その無法ぶりと脅威を訴えた。さらに、日本人拉致問題にも言及して「人権を蹂躙(じゅうりん)し、権力に対する抑制と均衡が何一つ働かない国」と強く批判した。時宜を得た国際社会へのアピールとして高く評価されよう。

 演説で注目されるのは、北朝鮮の核・ミサイルについて「これまでとは異次元のレベルに達した」と指摘したことである。北朝鮮は今年だけで計21発の弾道ミサイルを発射。それだけではなく、9月9日には5回目の核実験に成功した。

 北朝鮮が長距離弾道ミサイルに核弾頭を搭載できるようになれば、日本や韓国のみならず米国にも大きな脅威となる。その意味で、何よりも必要なのは対北共同歩調だ。

 首相は北朝鮮の核実験後、直ちにオバマ米大統領、次いで朴槿恵韓国大統領に電話し、日米韓3カ国で足並みをそろえて北朝鮮に断固たる態度を示した。適切な措置であった。

 次に求められるのは国際世論の喚起である。首相は、北朝鮮の脅威が新しい次元に達した以上、国連安全保障理事会は明確な態度を示すべきだと訴えるとともに、日本は非常任理事国として安保理の議論を先導すると決意を表明した。

 北朝鮮に対する包囲網を強化するには、安保理常任理事国で北朝鮮の最大の後ろ盾である中国をどう動かすかが大きな課題となる。効果的な制裁のためには、北朝鮮の貿易総額の9割を占める中国の協力が欠かせないが、中国は北の体制崩壊につながりかねない厳しい制裁には及び腰とされる。

 また、中国は自国の都合を対北政策に反映させている。北朝鮮が8月初めに発射した弾道ミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾し、安保理は報道機関向けの非難声明採択を目指したが、中国の反対で採択できなかった。この背景には、米韓両国が地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の在韓米軍への配備を7月に決定したことへの反発がある。

 しかし中国は経済的にも軍事的にも大国であり、地域の平和と安定に責任を持つ立場だ。北朝鮮の脅威を除去するため、中国は北の非核化に向けて影響力を行使する必要がある。

中国は国際ルール順守を

 その中国自身も、南シナ海で「力による現状変更」を進めている。首相は「海洋における平和、安定、安全のための法の支配の徹底」を呼び掛けたが、これは中国の無法な海洋進出を念頭に置いたものだ。

 南シナ海における中国の権利主張は、7月の仲裁裁判所の裁定で否定されている。中国は国際ルールを順守すべきだ。