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憲法改正論議、9条を中心議題に据えよ


 安倍晋三首相が憲法改正に意欲的だ。来夏の参院選後に国民投票を実施する目標を初めて示し、論議を本格化させていくとしている。改憲の動きが具体化するのは歓迎だが、小手先でなく、未来を見据えた骨太のものとすべきだ。

 日本取り巻く厳しい環境

 憲法論議を進めるに当たって過激派組織「イスラム国」による日本人殺害事件の教訓を肝に銘じておきたい。同事件はわが国を取り巻く国際環境の厳しさを改めて見せつけたばかりか、現行憲法の矛盾も浮き彫りにしているからだ。

 テロに屈せず、あらゆる手段を使って邦人の救出に当たる。それがテロ対策の鉄則とされるが、わが国には本格的な情報機関もなく、救出する部隊を展開する法整備もない。こうした当たり前の国家になるのを阻んできたのが、現行憲法にほかならない。

 前文は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする。しかし、現実の国際社会にはイスラム国のような「公正と信義」を踏みにじる集団や「無法国家」が存在する。

 他国に依存するだけで平和構築の努力を放棄するかのような態度は、もはや国際社会で通用しないと心得るべきだ。

 海外邦人をめぐる論議は2013年にも行われた。同年1月にアルジェリアで日本人10人が殺害され、邦人保護が問題となったからだ。安倍内閣は海外での緊急事態で邦人の陸上輸送を可能にするよう自衛隊法を改正したが、武器使用基準については憲法9条が認めていない「武力行使との一体化」に該当するとして緩和を見送った。

 これで邦人を保護できるのか疑問視された。国連が定めた基準には「任務遂行のための武器使用」があるにもかかわらず、日本だけが9条を根拠に縛りをかけ、自衛官と自らの管理下に入った者を守る場合に限って武器使用を認めるだけだ。

 これでは自衛官から離れた場所にいる邦人が襲撃されても武器を使って救援することができない。そもそも陸路輸送を認めても、航空自衛隊は9条を根拠に航続距離の短い輸送機しか保有しておらず、アルジェリアのような遠方に陸自部隊を送る手段を持たない。実際、03年からのイラク復興支援では軽装甲機動車などの装備をロシアからチャーターした輸送機で運んだ。

 安倍首相は参院予算委員会で、自民党がすでに9条改正案を提示しているとし、「なぜ改正するかと言えば、国民の生命と財産を守る、その任務を全うするためだ」と述べている。集団的自衛権問題を含め9条改正こそ憲法論議の中心テーマだ。

 ところが、自民党は昨秋の憲法審査会に緊急事態条項と環境権、財政規律条項の三つを示し、9条は公明党との折り合いがついていないので先送りした。環境権といった野党受けする条項を提示するだけでは、何のための改正か分からなくなる。

 自民は原点に立ち返れ

 自民党は立党以来、自主憲法制定を党是としてきた。その中心課題は常に9条だった。原点に立ち返るべきだ。

(2月10付社説)