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経済の再生 「分配」支える「成長」どう実現


《第2次岸田内閣の政策課題(下)》

 

自民党の新総裁に選出された岸田文雄氏=29日午後、東京都港区

自民党の新総裁に選出された岸田文雄氏=29日午後、東京都港区

 衆院選を受けて再出発した岸田文雄政権の大きな課題の一つは、新型コロナウイルス禍によって疲弊した経済の再生である。
 菅義偉前政権の下で進められたワクチン接種の進展などにより、新規感染者はこのところ全国で200人前後で推移し、感染拡大はほぼ抑え込まれている。

 ただ、欧州などでは再び拡大傾向にあり、日本でも「第6波」を警戒する声は少なくない。岸田首相は12日にコロナ対応の全体像を提示。3回目のワクチン接種を12月から始め、「18歳以上の希望する全ての方が接種を受けれられるようにする」とともに、従来のコロナ対応を検証し、来年6月までに司令塔機能の強化を含めた感染症危機管理強化策をまとめるという。

 こうしたコロナ対応が重要なのは、感染の封じ込めが経済再生の前提だからである。昨年、観光支援事業「Go To トラベル」で一度スタートしながら中断を余儀なくされるような愚は避けたい。

 経済再生の要となる経済対策に、政府・与党は財政支出を30兆円超とする方向で検討を進めている。

 コロナ禍からの経済回復とともに、岸田首相が掲げる「新しい資本主義」すなわち「成長と分配の好循環」を実現することで分厚い中間層の再構築を目指すもので、首相は9日の経済財政諮問会議で、「十分な内容と規模にしていきたい」と表明しているからだ。

 対策では売り上げが減少した事業者をはじめ、18歳以下や住民税非課税世帯、困窮学生へ給付金を支給するほか、土日集中を避けるなど内容を見直した「Go To トラベル」の来年2月再開を予定。また、「成長と分配の好循環」の早期具体化へ、保育士・介護士の賃金を月額9000円引き上げ、2月に実施する方針だ。

 政府はこれらの施策を盛り込んだ経済対策を19日に決定し、その裏付けとして2021年度補正予案を年内に成立させたい考え。財源には20年度一般会計決算の剰余金(約4・5兆円)や20年度から21年度に繰り越された予算(約30兆円)の一部を充て、不足分は国債の発行を検討するという。

 政府の「新しい資本主義実現会議」でも、8日に決定した緊急提言で、分厚い中間層の復活へ賃上げした企業への税制優遇の拡充など所得再配分の強化を打ち出しているが、賃金の伸び悩みを打開するには、文字通り「分配」を支える「成長」が欠かせない。

 新しい資本主義には、何より、安倍政権の経済政策「アベノミクス」でも十分な成果を出せなかった成長戦略の実効性が求められているということである。

 岸田首相は11日に開いた「デジタル田園都市国家構想実現会議」で、新たな交付金を創設しデジタル技術を用いた地域課題の解決を支援する意向を表明。来春にまとめる具体的な構想が「新しい資本主義実現に向けた成長戦略の最も重要な柱だ」と訴えたが、首相が描く成長戦略が分配を支える成長を実現できるか、その中身が問われることになろう。

(床井明男)


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