世界日報 Web版

北方領土「特区」、法の支配の価値観で対抗を


北方領土

 ロシアのプーチン大統領は、北方領土に投資を誘致するため、関税などを免除する特別区を創設すると発表した。

 北方領土は日本固有の領土であり、不法占拠を既成事実化しようとするロシアの振る舞いは断じて受け入れられない。

ロシア国内法を適用

 プーチン氏によれば、クリール諸島(北方領土と千島列島)で関税を免除。域内では付加価値税も課されない。法人税や資産税なども10年間免除する。優遇措置は国内企業だけでなく、「日本を含む外国企業」に適用されるという。

 特区はロシア国内法の適用を前提としている。日露両国は2016年12月、双方の法的立場を害さない形で、北方四島での共同経済活動に関する協議を始めることで合意した。しかし協議に進展がない中、日本を揺さぶるために特区の創設を決定したのだろう。

 加藤勝信官房長官は「ロシア法令を前提に地域の経済開発に関する制度を導入することはわが国の立場と相いれず、遺憾だ」と述べた。抗議するだけでなく、ロシアへの経済制裁など対抗措置を取るべきだ。

 北方領土問題をめぐるロシアの姿勢は厳しさを増している。ロシアでは昨年7月、領土割譲禁止を明記した改正憲法が発効した。北方領土を念頭に置いたものであることは明らかだ。

 この一因としては、安倍前政権が北方領土の4島返還を断念し、2島返還にかじを切ったことが挙げられる。安倍氏とプーチン氏は18年11月、平和条約締結後の2島引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言を基礎に交渉を進めることで合意したが、日本側の譲歩がロシアの強硬姿勢につながったと言わざるを得ない。

 ロシアだけではない。沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張する中国に、日本が領土を軽視するとの印象を与えれば、中国の攻勢が強まりかねない。北方領土の特区をめぐっても、中国が投資に参加することは十分に考えられる。

 特区創設を発表したプーチン氏は、対日関係について「平和条約締結に関心があるという点でわれわれのやり方に変化はない」と強調。他方で「日本は常に立場を変えてきた」と指摘し、日米の軍事協力に関するロシアの懸念に日本は応えていないと主張した。

 プーチン氏が北方領土を返還しようとしないのは、返還後に米軍施設が設置されることを恐れているためだ。だが、このことが返還を拒否する理由にはならない。

4島返還を強く求めよ

 ロシアが領土割譲を禁じたことで、日ソ共同宣言を基礎に平和条約締結交渉を進めるとの合意は無効になったと考えていいのではないか。

 旧ソ連は45年8月、当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、北方四島を不法に占拠した。2014年3月にはウクライナ南部クリミア半島を併合するなど、ロシアは平気で国際法に違反する国だ。日本は法の支配という価値観を共有する民主主義国家と連携してロシアに対抗し、4島返還を強く求めるべきだ。