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自民総裁選、国難の今こそ改憲世論喚起を


 自民党のトップを選ぶ総裁選が、9月17日告示、29日投開票となった。岸田文雄前政調会長が出馬を表明し、複数候補で争われることになった。下村博文政調会長、高市早苗前総務相らも意欲を示している。新型コロナウイルス対応をめぐる提案型の政策論戦をするとともに、国難の今こそ急がれている憲法改正の世論を喚起する機会にしてもらいたい。

 私権制限の論戦必要

記者会見で自民党総裁選出馬を正式表明する岸田文雄前政調会長=26日午後、東京・永田町の衆院議員会館

 今回の総裁選は、総裁の任期満了に伴って実施されるため、国会議員だけでなく全国の党員・党友も含まれる。それ故、再選を目指す菅義偉首相は二階派、細田派、麻生派といった党内主流派の支援を受けても不十分で、半数を占める党員・党友票を固めなければならない。

 その際、参考になるのが直近の22日に投開票された横浜市長選だ。首相支持の候補者が敗北した背景には、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致問題で、推進の旗振り役だった首相が反対の候補を推し、自民分裂を引き起こしたという首相の地元の特殊事情がある。この図式を全国の衆院選挙区に当てはめることはできない。

 注目すべきは、無党派層の多くの票が当選した野党候補に流れた点だ。同候補は医療の専門家という触れ込みで政府のコロナ対策を批判。神奈川県の新たな感染者数が1日(週平均)2000人をはるかに上回る勢いとなり、政府の政策に理解を得ることが困難なまま投票日を迎えた。従って、総裁選では世論に近い党員・党友にコロナ対策をどうアピールし評価されるかが候補者の課題になろう。

 首相は「ワクチンの接種がデルタ株に対しても明らかな効果があり、新たな治療薬で重症化を防ぐことも可能だ。明かりははっきりと見え始めている」と語った。首相がそれを分かりやすく語ることが重要だし、他の候補もどういう状況になれば経済活動を再開できるかといった「出口戦略」を具体的に示すことが望ましい。

 今の自民党に欠けているのは、憲法改正への意欲である。それが党の活性化を妨げている。政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「日本の場合は法律が、医療も個人も要請ベースだ。これについてはいろんな議論をする必要がある」と述べた。

 憲法を守って国民の生命や安全を守ることができないとあっては本末転倒だ。私権の制限もあり得るのは当然で、そのために憲法に緊急事態条項を書き込むことが必要だろう。それを論戦で深めてもらいたい。

 コロナ対策だけではない。安全保障関連法が整備され集団的自衛権の限定的行使が可能になったとはいえ、わが国を取り巻く安全保障環境は激変している。自衛隊の位置付けを明確にして「自衛隊違憲論」を解消し、自衛権についても条文に書き込むべきである。こうした憲法の本丸に関わる議論が低調になっていないか。

 衆院選対策に直結する

 総裁選が衆院選に先行することになったが、骨太の政策論争を展開することが「自民党らしさ」の発揮につながり、それが衆院選対策にも直結しよう。