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日韓首脳会談 文氏に託された最後の機会


 東京五輪の開幕式に合わせ、韓国の文在寅大統領が訪日し、菅義偉首相と首脳会談を行うことをめぐり両国の間で調整が続いている。

 会談が行われるのであれば、戦後最悪と言われるほど悪化した関係を改善させるきっかけにしなければならない。

韓日議連が急遽来日

 超党派でつくる韓日議員連盟の一行が急遽(きゅうきょ)来日し、日韓議員連盟と合同幹事会を開いた。懸案を含め日韓関係全般を話し合う両議連のパイプを利用し、文氏訪日に向けた詰めの話し合いが行われたようだ。

 一行は自民党の二階俊博幹事長とも会談し、同氏から「来日歓迎」の言質も取った。文氏訪日にかける韓国側の意気込みがにじんでいた。

 今回の五輪は新型コロナウイルスの感染防止に向けた緊急対応が続く中で行われる。通常より少ないとはいえ、世界各国の首脳クラスも来日する。菅首相にとっては多忙を極める日々となり、一人の外国首脳とじっくり腰を据えて会談する余裕はないだろう。

 菅首相は、文氏が来日すれば他の首脳たちと同様に「外交上、丁寧な対応」をすると述べたが、韓国側は会談の格式や時間などにこだわっているようだ。

 文氏が日本との首脳会談にこれほど意欲的なのは、個人的な思惑が絡んでいるからではないのか。日韓関係を改善できれば、日米韓3カ国の連携を強調するバイデン米政権に北朝鮮との対話を促すことができる。朝鮮半島の平和定着を象徴的にでも実現すれば自らのレガシー(政治的遺産)となり、来年の大統領選で左派候補の当選を後押しできる。

 残念ながら文氏が本気で日韓関係改善に向き合おうとしているとは思えない。

 文政権は2015年の慰安婦合意を一方的に反故にし、18年には元徴用工問題をめぐる大法院(最高裁)判決が国際法違反の状態を作り出したことを放置した。両国間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を示唆するなど安全保障の重要事項まで揺さぶりに利用した。

 過度な反日路線は国内での基盤固めに利用されたが、その代償は大きい。日本側の文政権に対する拭えない不信感となって跳ね返ってきたからだ。

 今年に入り対日融和姿勢に転じた文氏の真意を測りかねている菅政権も、「平和の祭典」である五輪を舞台にした外交となれば、来日する文氏を丁重にもてなすのは当然のことだ。だが、文氏が問題解決の覚悟を持って来日しないのであれば、日本の対韓不信は変わらない。

 両国の政治日程などから、文氏が日本との首脳会談に臨むのは今回が最後になる可能性がある。日韓関係改善のきっかけを作り出せるか、文氏に託された最後の機会とも言える。

「会談ありき」の韓国

 一部では、日本は輸出管理優遇措置、韓国はGSOMIAをめぐり、それぞれが現在の運用を緩和させることで、首脳会談が実現するとの見通しも出ている。仮に「会談ありき」の韓国側に押し切られる形で首脳会談の場を設けても、それが関係改善の糸口になるか疑問だ。