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防衛白書 中国の動向に警戒強めよ


 岸信夫防衛相が閣議で令和3年版の防衛白書を報告した。今回の白書は、中国の急速な軍備増強や東・南シナ海での軍事活動の活発化、さらにインド洋など遠方への行動拡大を踏まえ、これまでになく厳しい表現で中国を批判し、その動向に強い警戒感を示した点が注目される。

 防衛相が厳しく批判

 まず「刊行に寄せて」と題する序文において、岸防衛相が自らの言葉で、国際法上疑義のある中国海警法によって「わが国を含む関係国の正当な権益を損なうことがあってはならず、東シナ海や南シナ海などの海域において緊張を高めることになることは断じて受け入れられない」と強く批判している。

 毎回序文では、刊行の意義や全体の概要を説明するのが通例であり、大臣自らがこれほど厳しい言葉で中国を難じることは異例とも言える。今回の白書で示された強い中国批判のトーンが、岸防衛相の意向によるものであることが読んで取れる。

 本文を見ても、沖縄県・尖閣諸島周辺での中国海警船の活動について昨年の白書では「力を背景とした一方的な現状変更の試みを執拗に継続しており、強く懸念される状況」と記述していたものが、今年の白書では「中国の活動は、そもそも国際法違反であり、力を背景とした一方的な現状変更の試みを執拗に継続し、事態をエスカレートさせる行動は全く容認できない」と批判のトーンを数段高めたものになっている。

 また第1部の「わが国を取り巻く安全保障環境」の中に新たに「米国と中国の関係など」と題する一節を設け、対立を強める米中両国の動きやインド太平洋、それに台湾をめぐる軍事動向を詳述している。

 特に台湾については、中台の軍事バランスなどの「動向に注目していく必要がある」とのこれまでの表現から踏み出し、4月の日米首脳会談時の共同声明で台湾が取り上げられたことを踏まえ、「台湾情勢の安定は、わが国の安全保障はもとより国際社会の安定にとって重要」との見解を初めて明記し、台湾の安全がわが国の安全保障と密接な関係にあることを強調した。

 さらに中露の爆撃機が2年続けて日本海や東シナ海を共同飛行したことを挙げ、中国とロシアの軍事連携が強化されていると分析し、注意を促した。

 今回の白書で政府が示した中国への強い警戒心は、現下の厳しい東アジア情勢を踏まえたもので、日本国民だけを対象とするのではなく、広く国際社会に中国の脅威を訴えるとともに、何よりも中国を牽制(けんせい)する狙いが込められていたと思われる。

 より分かりやすい記述を

その意味で、令和3年版防衛白書刊行の意義は大きい。国民に政策への理解と支持を求めることが白書の基本的役割であることに鑑みて幾つか注文を付けるとすれば、今まで以上に警戒すべき中国の動きに、日本はどのような防衛戦略で対処しようとしているのか、現在の防衛体制に問題や欠落があるとすれば何が政策課題となるのか、また台湾が日本の安全保障と深く関わる理由などについて、より詳しく、そして分かりやすく記述してほしかった。