世界日報 Web版

立共“共闘”の前哨戦 「連合政権」で温度差浮き彫り


《’21首都決戦(下)》

 「前回の都議選との一番の違いは共産が出ていないことだ」
 渋谷区(定数2人)のある都民ファースト選対関係者はこう指摘する。前回1万323票を獲得した共産が独自候補の擁立を見送り、立憲の候補者に一本化した。同関係者は「共産党の活動は見えないが、票は出てくる」とその組織力を警戒する。

街頭演説を聞く有権者ら=6月26日、東京都清瀬市の西友清瀬店前(竹澤安李紗撮影)

街頭演説を聞く有権者ら=6月26日、東京都清瀬市の西友清瀬店前(竹澤安李紗撮影)

 立憲と共産は渋谷区だけでなく、定数1~2人の選挙区を中心に、候補者の競合を避け一本化する「棲(す)み分け」を行っている。共産は前回8803票を獲得した三鷹市、1万2690票を得た立川市、1万2469票の西多摩でも今回候補者を立てず、立憲も共産現職が出馬した北多摩4など複数区で候補者を立てていない。

 秋までに行われる衆院選での選挙協力を先駆けているわけだが、一方で両党が衆院選の先に見据える政権交代をめぐっては温度差が浮き彫りになっている。

 「総選挙では政権交代を実現し、国民の声が生きる新しい政権、野党連合政権をつくろうではないか」

 都議選告示日の25日、共産委員長・志位和夫は第一声となった街頭演説の結びでひときわ力を込めて訴え、年配者の多い聴衆もこれに拍手で応えた。共産は2019年から掲げる「野党連合政権」構想を衆院選での立憲との選挙協力の条件として挙げており、志位は連携について、閣内・閣外にこだわらない考えを示している。各地で行う街頭演説でも構想に言及し、集まった支持者を鼓舞する。

 「コロナの世界的な危機を迎えた時に、政治はその本来の役割を放棄してきた。この秋にある衆院選で変えなければいけない」

 立憲代表の枝野幸男も各地の遊説で、政権交代の意思を明らかにしているが、一切共産との政権構想に触れない。他の幹部も同様だ。最大の支援団体である連合が立憲と共産の接近に強い難色を示していることが大きい。

 連合会長の神津里季生は、これまでも共産との連立政権に繰り返し反対してきたが、23日の講演では閣外協力についても「あり得ない」と強調。立憲と同じく連合の支援を受ける国民民主代表、玉木雄一郎も、「共産が入る政権には入らない」と明言している。

 共産は前回17年の都議選で、自民や当時の民進が苦戦する中2議席を増やした。今回もさらに議席を増やして存在感を増し、野党連合政権実現のアピール度を強めたい思惑だ。衆院選へ向けた候補者の一本化が進む中で、野党にとって今回の都議選は衆院選での選挙協力を占うものとなる。(敬称略)

(都議選取材班=石井孝秀、辻本奈緒子、亀井玲那、竹澤安李紗)