世界日報 Web版

原発政策、温暖化防止に新増設が不可欠


 東日本大震災が引き起こした東京電力福島第1原発事故の影響で、政府の原発政策は停滞している。

 菅義偉首相は温室効果ガスの排出量を2050年までにゼロとする目標を掲げている。目標達成には、発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の再稼働や新増設が不可欠だ。

多くが耐用年数を経過

 震災前には54基の原発が稼働していたが、福島第1原発事故で刻み込まれた国民の強烈な不信感を背景に、震災から10年が経過しても地元住民の同意を得て再稼働したのは9基にとどまっている。現行のエネルギー基本計画では、30年度の電源構成に占める原発の比率を20~22%としている。しかし、この目標の達成は見通せない。

 日本は地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」で、30年度の温室ガスの排出量を13年度比で26%削減する国際公約を示している。

 温暖化を防ぐには原発と同様にCO2を排出しない再生可能エネルギーの活用が重要だが、発電量が天候に左右される欠点がある。安価な電力を安定的に供給でき、政府が「重要なベースロード電源」と位置付ける原発が欠かせない。

 だが、多くの原発は運転を再開しないまま原則40年の耐用年数を経過している。政府は震災後、原子力規制委員会の認可を得れば原発の運転期間を最大60年間に延長できる仕組みを導入したが、経済産業省の見通しでは、新増設がなければ国内全原発(建設中を含む)を60年間運転しても、運転可能な原発は60年に8基にまで減少する。

 政府は新増設について「想定していない」(梶山弘志経産相)としている。だが、現状で温室ガスの排出量を50年までに実質ゼロとすることは困難だ。政府は原発に対する国民の不信感の払拭(ふっしょく)に努め、新増設への理解を広げる必要がある。

 その意味で、東電柏崎刈羽原発(新潟県)で外部からの侵入を検知できないなどテロ対策の不備が相次いだことは大きな失態だと言わざるを得ない。このような事態が発覚すれば、原発政策に対する信頼を得られないのは当然である。

 規制委は同原発内の核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出すことを決定した。同原発7号機は規制委の新規制基準適合審査に合格しているが、命令では原子炉内への核燃料搬入も禁じるため、再稼働は見通せなくなった。新潟県の花角英世知事は「(規制委が)許可(合格)を取り消すことも含めて考えてほしい」と話している。

 原発はエネルギー安全保障や温暖化対策などのために必要だが、活用するには安全確保が大前提となる。テロ対策は事故対策と共に危険防止に欠かすことができない。それをおろそかにした東電の安全意識が問われている。

東電は信頼回復に努めよ

 同原発の再稼働が実現すれば、事故を起こした東電が、再び原発を運転できる企業となったことを示す意味合いもあった。しかし、今回の問題で原発政策の停滞が長期化しかねない。東電は猛省し、再発防止と信頼回復に努めなければならない。