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地銀再編策 顧客への目配りが欠かせない


 独占禁止法に例外を設け、地方銀行などの統合を促す特例法が施行された。

 特例法は地銀などについて、統合による収益改善が見込める上、貸出金利などの不当な引き上げが起きる恐れがない場合に限り、独禁法の適用除外とするものだ。これで地銀は融資シェアを気にせず統合できるようになる。

 経営基盤強化を急がせる

 菅義偉首相は、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた地方経済を支えるため、地銀の統合・再編を進める方針を打ち出している。10年以内の時限措置である特例法には、再編による経営基盤の強化を急がせる狙いがある。

 長崎県内の2地銀が合併して10月に十八親和銀行(長崎市)が発足した例では、統合後の県内融資シェアが寡占状態になることが問題視され、公正取引委員会による審査が長期化した。このため、特例法では統合手続きを迅速にできるようにした。

 急速な人口減少や超低金利などを背景に、地銀の経営環境は厳しさを増している。地銀102行(単体ベース)の2020年9月中間決算で、純損益は6割に当たる60行で減益か赤字を余儀なくされた。

 102行の純利益の合計は前年同期比11・4%減の3993億円で、12年9月中間決算以来8年ぶりに4000億円を割り込んだ。新型コロナの影響で融資先の経営が悪化し、貸し倒れに備えた与信費用が膨らんだことが大きな原因だ。

 政府は地銀再編に必要な初期コストの一部を支援する新たな枠組みを来年夏にも創設する。新型コロナ後の地方経済再生のため、融資先の企業を十分に支援できるよう銀行規制の緩和も検討中だ。

 このほか、日銀も地銀の経営基盤強化のための特別制度を導入することを決定。経営統合で収益力強化に取り組むことなどを条件に、日銀に預けている当座預金に0・1%の金利を上乗せするというものだ。

 日銀も金融機関の体力低下に警戒感を強めており、再編を後押しする政府に足並みをそろえた形だ。特別制度を全ての地銀・第二地銀や信金に適用した場合、上乗せ金利の合計額は年400億~500億円程度となる見込みだという。

 政府が地銀再編を促して経営体力の強化を図ることは、地方創生のためにも重要だ。ただ、再編によって地銀の数が減少すれば顧客の利便性が低下する懸念も残る。再編に当たっては、顧客への十分な目配りが求められよう。

 政府は他の支援策も

 地銀の使命は、地元企業への融資を通して地域経済の活性化に寄与することである。政府は再編策を次々と打ち出しているものの、地銀は顧客にメリットがない限り、他行と統合することはないとの指摘もある。

 統合によって地元の顧客と向き合ってきた従業員のモチベーションが低下することを懸念する見方も出ている。統合は一つの選択肢ではあるが、業務提携や緩やかな連携などの方法もある。政府は地銀について、統合を促す以外の支援策も進める必要があるのではないか。