見通せぬ日朝交渉、「拉致」解決阻む相互不信


どうなる朝鮮半島情勢

 安倍晋三首相が日朝間の懸案で最優先課題に掲げてきた北朝鮮による日本人拉致問題。第1次内閣を含め在任期間は8年を超える歴代最長となったが、拉致問題は解決に向けた動きが鈍い。最大の原因は相互不信の深さにある。

 安倍首相は昨年5月、無条件で金正恩氏と会うと表明したが、2014年のストックホルム合意で北朝鮮が被害者再調査に誠意を示さなかったなど苦い経験がある。北朝鮮が金銭的見返りに執着し、被害者情報を小出しにするのではないかとの疑念も消えない。

 一方の北朝鮮は、無条件の首脳会談といえども実際には拉致問題を入り口に置いたままの交渉入りになることを警戒している。北朝鮮はそもそも2002年の小泉純一郎首相訪朝で拉致問題は解決済みという立場。帰国させた被害者5人を再び北朝鮮に戻すという約束や金銭的見返りに日本が応じなかったことへの不信もいまだにある。事件発生から数十年がたち、被害者家族の高齢化もあって解決は待ったなしだが、糸口すら見いだせず、日本は対話と圧力を併用しながら水面下の接触で模索が続く。

 南北関係も当面は冷え込みが予想される。米朝非核化交渉で仲介役を買って出た韓国の文在寅政権が正恩氏の思い描くシナリオ通りの展開に事態を推移させられず、「正恩氏は文氏を信用していない」(北朝鮮問題専門家)。

 米朝交渉の行方次第では文政権が南北経済協力などで存在感をアピールしようとする可能性はあるが、すでに正恩氏にその“実力”を見透かされ、どこまで出番があるか不透明だ。