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日韓首脳会談 徴用工問題に向き合わぬ文氏


 日中韓首脳会談を行うため中国四川省成都市を訪れた安倍晋三首相は、韓国の文在寅大統領と1年3カ月ぶりに首脳会談を行った。だが、最大の懸案である元徴用工に対する日本企業の賠償を命じた韓国大法院判決をめぐり、両首脳は対話継続を確認しただけで、文氏は従来の判決容認姿勢を崩さなかった。依然、関係悪化の根本原因に向き合おうとしておらず遺憾だ。

 関心は輸出管理問題

 今回の会談は日中韓の首脳が一堂に会する場を利用したもので、2国間会談を開催せざるを得ない側面が強かった。取りあえず対話路線を維持することに主眼が置かれたようだが、文氏の日本に対する頑(かたく)なな態度が改めて浮き彫りになった。

 文氏は会談で日本政府による対韓輸出の管理厳格化を問題視し、早期に元の状態に戻すよう求めた。文氏がこの問題に関心を示すのは、半導体など核心産業が打撃を被り、低迷している経済への悪影響がさらに広がる恐れがあるからだろう。

 日本の措置は戦略物資3品目の対韓輸出に安全保障上の懸念があり、しかも韓国がその協議に応じようとしなかったため、やむを得ない決断だった。だが、文氏はこれを判決に対する日本の「経済報復」と位置付け、さらにそれに対抗して日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告した。土壇場で破棄は撤回されたが、日本に譲歩したと受け止められないよう汲々(きゅうきゅう)としていた。

 関係悪化の根本原因が元徴用工判決に対する韓国政府の姿勢にあることを文氏は全く認識していない。常に被害者感情を口にしているが、実際は国内支持層や来年4月の総選挙を意識した極めて内向きな理由で日本との関係を犠牲にしているのではないか。

 今回の会談で文氏はGSOMIAを現状通り維持するには日本が輸出管理を緩和させることが条件だという趣旨の発言をしたという。一部ではそれが期限付きだとも指摘されている。安保の枠組みを日本を揺さぶるカードに使うつもりのようで、あってはならないことだ。

 韓国大統領府は会談について「互いの肉声を通じ相手方の立場を聞く場だった」と説明したが、文氏にはもはや関係改善に動いてもらうことは期待できないという失望感を日本側に抱かせた可能性がある。

 元徴用工問題では原告側が差し押さえた日本企業の韓国内資産を現金化する手続きを進めており、安倍首相は現金化回避を求めた。日本企業に実害が出た場合、政府としてもこれに応じた措置を取らざるを得ず、そうなれば韓国の反発は必至だ。

 原告を支援する市民団体は韓国政府の意向を注視している。文氏は事態を悪化させるか収拾するかが自らの意思に懸かっていることを忘れてはなるまい。

 安保の危機招くな

 関係悪化の長期化は2国間の経済協力や民間交流にとどまらず、武力挑発を繰り返す北朝鮮や覇権主義の中国などに付け入る隙を与え、北東アジアの安保に影を落とす。文氏にはこれ以上、関係悪化を放置して危険な事態を招くようなことは避けてもらわねば困る。