世界日報 Web版

「聖戦」志向せぬタリバン 支援と圧力で「理性化」を


中央アジアから見る アフガン情勢

国境の町テルメズにあるイスラムの聖者の廟を参拝に訪れる人々(藤橋進撮影)

 アフガニスタンとの国境の町、ウズベキスタンのテルメズ近郊には、カラ・テパなど古代の仏教遺跡が多数ある。遺跡のすぐ近くを国境のアムダリア川が流れ、川に沿ってフェンスが続いている。その方向にカメラを向けた時、同行のガイドから「危ないですよ。銃撃されるかもしれません」とたしなめられた。

 遺跡から市内へ戻る途中、9世紀に活躍したイスラム神秘主義(スーフィズム)の聖者アルハキム・アッテルミズィーの廟(びょう)を訪ねた。ウズベキスタンには、「ハディース」を編纂(へんさん)したアル・ブハーリーなどイスラムの聖人の廟が多数ある。テルミズィー廟は美しく整備され、周りは木々が植えられた広大な公園となっている。

 多くの参拝者が訪れていたが、特にその周りを軍や警察が警備している様子がないのは、少し意外だった。穏健で世俗主義的なイスラム教徒の多いこの国では、聖人廟への巡礼が盛んだが、「イスラム国」(IS)などの過激派は、聖人崇敬を目の敵にする。2015年にはシリアのパルミラ遺跡にあるイスラム聖者の墓2基を破壊しその動画をネット上に流した。

 アフガニスタンでタリバンが政権を掌握し、ISがテロ活動を活発化させているにしては国境の町の聖人廟は平和そのものだった。

 タリバンの政権掌握で国際社会が危惧するのは、アフガンにおける人権問題と同国が再びテロリストの巣窟になることだ。米、ロシア、中国はもちろん、国境を接する中央アジアの近隣諸国にとっても切実な問題だ。ウズベキスタンでもISに身を投じた若者がおり、アフガンで過激派「ウズベキスタン・イスラム運動」が活動している。

 ウズベキスタン大統領直属の戦略・地域研究所のルスタム・クラモフ部長は、「われわれはタリバンのイデオロギーは支持しない。女性の人権を尊重すると言った約束が守られるか、注視し、それを守るよう働き掛けている」と断った上で、「重要なことは、彼らは国内で彼らのイスラム主義的政策を実現しようとしているだけで、世界的な聖戦(ジハード)を目指してはいないということだ」と強調する。

 カブール空港の爆弾テロを行った「イスラム国ホラサン州」とタリバンは敵対している。かつて共闘していた聖戦主義のIS系の過激派からは、タリバンは生ぬるいと攻撃されている。

 「アフガンをテロリストの巣窟にしないためにも安定化させないといけない。そのために中央アジアの国が協力しないといけない」(クラモフ氏)というのが、ウズベキスタン側の基本的立場だ。タジキスタンなどはタリバンに対しより厳しいとも伝えられるが、過激派を抑えるという目的は同じで、大統領同士電話で連絡を取り合っているという。

 今後タリバンがイスラム主義を奉じつつ、人権問題など国際社会の承認を得られるかどうか予断を許さない。日本を含む西側諸国は、人権問題などでは圧力を加えつつも、冬に向けての食糧不足など人道的支援をし、イスラム史の専門家・山内昌之氏の言うタリバンの「理性化」を促してゆくべきだろう。そうしなければ、アフガンは中露の準勢力圏となってしまいかねない。

 そういう中で、アフガニスタンで一定の信頼を得ている日本に期待されるものは少なくない。今後日本が、アフガン問題に積極的に関与し、成果を挙げようとするなら、情報豊富で親日的なウズベキスタンなど中央アジア諸国政府との連携が重要になってこよう。

=終わり=


【関連記事】
・中央アジアから見る アフガン情勢 田中哲二
・ウズベクが積極関与 ーアフガン情勢
・「聖戦」志向せぬタリバン 支援と圧力で「理性化」を