世界日報 Web版

一党支配維持し米国凌駕狙う中国


中国共産党100年

―識者はこう見る

中国問題グローバル研究所所長・遠藤 誉氏

 中国共産党は今年7月1日に建党100周年記念を迎えるが、権力の座をめぐって裏切りと陰謀の100年間だったと言っていい。政権奪取後に自国民を7千万人ほども殺害した政党は中国共産党を措(お)いて他にない。

中国問題グローバル研究所所長・遠藤 誉氏

 えんどう・ほまれ 1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し53年に日本帰国。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃』『毛沢東 日本軍と共謀した男』など多数。

 陰謀に関して陰湿を極めたのは鄧小平だ。建国後間もない1954年に鄧小平は、毛沢東が後継者とみなしていた高崗を自殺に追い込み、1962年には毛沢東が高く評価していた習仲勲(習近平の父)を失脚させることに成功した。

 二人とも西北にある陝西省延安を中心とした革命根拠地を築いた英雄で、毛沢東が長征の末に辿(たど)り着いた延安がなかったら中華人民共和国は誕生していない。毛沢東が西北革命根拠地を重んじていたので、鄧小平はこの二人を失脚させないと自分が出世できないとして冤罪(えんざい)に追い込み、習仲勲は16年間を牢獄・軟禁・監視の中で過ごした(詳細は拙著『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。

 そこで2012年に国家のトップに立った習近平は、父の仇(あだ)を討つべく長征と延安を重んじ、「初心を忘れるな」と強調したため、毛沢東への先祖返りかと揶揄(やゆ)された。

 しかし「新時代」思想により、習近平の狙いが表面化し始めた。

 2017年10月の第19回党大会で「習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想」を党規約に書き込み、2018年3月には憲法に書き込んだだけでなく、国家主席の2期10年の任期を撤廃させた。

 「新時代」の意味は、今年6月に開館された中国共産党歴史展覧館を見ると明確になる。展覧館は四つの部分に分けられ、第1部分と第2部分(1921年~76年)は毛沢東時代で、第3部分は「鄧小平+江沢民+胡錦涛」、第4部分は「新時代」の習近平コーナーとなっている。第3部分は「新時代」のための過渡的指導者3人にすぎず、第4部分から、任期を撤廃したために2022年の第20回党大会以降も国家のトップに立ち続けるであろう習近平の「長い時代」へと広がっている。

 毛沢東が建国した中華人民共和国を「新中国」と呼ぶが、その「新」に対して習近平の「新時代」があり、習近平は中国を「毛沢東の新中国」と「習近平の新時代」の二つに区分していたことが分かった。

 では「新時代」は何を意味するかというと、2010年以降、中国の国内総生産(GDP)が日本を追い越して世界第2位となったが、米国は中国に追い付かれてはならないと激しい「中国潰(つぶ)し」を始めており、米中の力が拮抗している時代を指す。だから国家のスローガンは「中華民族の偉大な復興」であり「中国の夢」だ。この「新時代」において中国は「中国製造2025」に代表されるようなハイテク化によって米国を追い抜こうとしている。事実、5Gやその基地局あるいはAIや宇宙開発において、中国は既に米国を抜きつつある。軍事力もミサイルなどにおいては米国を抜いている。

 習近平の狙いは習近平がトップにいる間に米国を追い越し、一党支配体制を維持することだ。一党支配体制を維持するためには「言論の弾圧」によって国家を統治していなければならない。

 習仲勲は最後まで言論の自由を重んじ、「異論を認める法律」さえ制定しようとしていた。そのため1990年に再び鄧小平により失脚に追いやられる。

 その仇を討っているはずの習近平は、父の理念を裏切って一党支配体制維持を優先した。ここに習近平のアキレス腱(けん)がある。しかし習近平は香港の言論弾圧などに関して一歩も譲らず、米国を乗り越える日を目指すだろう。