世界日報 Web版

中国共産党内に亀裂


特報

習主席の「大国外交」に反旗
李首相との権力闘争激化

 中国の強硬路線が顕著だ。だが、これが党内で軋(きし)みを生み出し、内部の権力闘争が激しくなってきている。とりわけ習近平国家主席と李克強首相の権力闘争が顕著だ。(池永達夫)

北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会-情報流出の恐れ-中国に強硬(全人代)に出席する習近平国家主席(左)と李克強首相5月22日(AFP時事)

北京の人民大会堂で開かれた全国人民代表大会-情報流出の恐れ-中国に強硬(全人代)に出席する習近平国家主席(左)と李克強首相5月22日(AFP時事)

 中国は習近平政権になって、低姿勢に徹する鄧小平の外交路線・韜光養晦(とうこうようかい)を捨て、自国の意志を貫く「大国外交」に転換した。

 それでも圧倒的なパワーを持つ米国にだけは、韜光養晦路線を堅持しているかに見えた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大以後、その米国に対しても牙をむき、共産党独裁体制の利益を守ろうとする独善性に拍車が掛かる。

 そうした習近平政権の大国外交を後押ししているのは、愛国主義的な国内世論だ。ただ、共産党が一枚岩となって支持しているわけでは決してない。

 評論家の石平氏は、先月21日に習国家主席が人民大会堂で主催した企業家座談会に注目する。

 石平氏は「異例中の異例。もはや異常な会合だった」と強調する。

 どういうことかというと、経済問題をテーマとする座談会に政治局常務委員7人のうちの4人(王滬寧、汪洋氏など)が出席するという異例のハイレベル会議でありながら、経済をカバーする李首相が欠席していたからだ。

 同日、李氏は海外や地方視察に出掛けていたわけでもなく、北京で別の会議に出席していた。つまり李氏は、ハイレベルの座談会に呼ばれなかったわけで、「李首相排除の決定的なステップとなった」と石平氏はみる。

 「習主席のこうした露骨な李首相外しの背後には、5月下旬以降の李首相による習主席への突き上げがあった」と石平氏は言う。

 李首相は5月28日、全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、「中国国民の6億人は月収1000元(約1万5000円)程度の生活だ」と暴露した。

 その政治的意味を、石平氏は以下のように説明する。

 習主席は、2020年までに国民全員の貧困からの脱出を看板政策として掲げてきた。李首相はそれに対し、脱貧困はただのほら吹きでしかなく、嘘(うそ)だと国民に向かって暴露することで習主席を突き上げたというのだ。

 「衆人環視の中、習近平の顔に泥を塗り反旗を翻した」というのだ。

 さらに李首相は先月15日、「中国は依然として発展途上国であって、力を考慮して物事を進めるべきだ。金があっても面子(めんつ)プロジェクトやイメージプロジェクトに使うべきではない」と主張した。

 普通に聞けばただの正論だが、これも石平氏は「習主席への当て付けだ」という。

北載河会議に注目

 習主席は積極的に面子プロジェクトを組み、アフリカの債務600億㌦を帳消しにしたり、第3世界にお金を湯水のようにばらまく。そうしたばらまき外交は、李首相とすれば途上国である中国の力を全く考慮していないとなる。
 さらにコロナ禍の失業問題に対処するため「露天商」経済を推進したい李首相と、大国の威信を潰すスモールビジネスに否定的な習主席の確執も顕著となっている。

 なお7月下旬の起業家座談会で習主席は、今後の経済は国内の大規模市場の利点を生かし、国内総循環の新しい経済体制を形成していくとし、世界経済が脱中国を始めている中、デカップリングで世界経済から切り離されても国内経済でやっていくという、本人の口から初めて国内大循環経済の話が出た。

 習主席とすれば世界経済との切り離しを覚悟してでも、大国外交路線を変えるつもりはないらしい。

 だが、それで中国はやっていけるのか。そもそもこのままで世界に覇をとなえる習氏が提唱した「中国の夢」は実現できるのか。党内保守派からも疑問視されるようになってきた。

 こうした中国共産党政権の存亡に関わる懸念を、2年後の共産党大会で続投を目指す習国家主席に直接、問いただしたいと思っている長老や共産党幹部らは少なくないはずだ。

 その機会となる引退した長老と現役指導部が意見を交わす北載河会議のなりゆきが注目される。

 ただ北載河会議は例年、8月初旬から始まるのだが、石平氏は「長老グループの反発が怖くて、習氏は開催しない可能性がある」と指摘する。

 北載河会議は慣例上、開催されているもので、習氏が出掛けなければ会議そのものは成り立たない。