香港立法会選、延期で与党惨敗回避か


「コロナ」理由 選挙に厳しい制約
民主派屈せず代理候補準備

 香港で9月6日に投開票される立法会(議会=70議席)選挙に向け、31日には立候補が締め切られ、選挙管理委員会が民主派のどの候補を立候補資格剥奪するのか、基準や理由に注目が集まっている。香港での反体制的な言動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)施行で、親中派を除く有権者の林鄭月娥政権への不信は増大。

 昨秋の区議会選の与党・親中派惨敗を繰り返さないように、新型コロナウイルスの感染拡大を大義名分に選挙活動の制約を強め、行政長官不信任と親中派敗北回避への最後の一手として選挙延期論も強まっている。(香港・深川耕治)

28日、香港で、街頭に掲げられている「国家安全維持法」(国安法)のポスター(AFP時事)

28日、香港で、街頭に掲げられている「国家安全維持法」(国安法)のポスター(AFP時事)

 7月29日付の親中系香港紙「星島日報」は1面トップで林鄭月娥行政長官の諮問機関・行政会議が28日、立法会選挙を新型コロナ感染による公衆衛生上のリスクと選挙実施の公平性の立場から1年延期することを内定したと報じた。長官の超法規的措置を可能とする「緊急状況規則条例」(緊急法)の発動で決めるとしているが、会議出席者から異論は出なかったという。

 香港の立法会条例では行政長官が選挙期日の延期を決断できるが、14日以内の実施しかできず、1年延長はできない。親中派の大御所、曽●(=金へんに玉)成・前立法会議長は、行政長官の権限で超法規的に適用できる緊急法を使って半年から1年延期すべきだとの意見を吹聴。

 中国全国人民代表大会(全人代)常務委員の譚耀宗氏も「1年延長」を主張するなど、ベテラン親中派の提言をあっさり呑(の)んだ形だ。立法会議員(任期4年)の任期も1年延長する必要があるが、香港基本法第69条(議員任期)と立法会条例の例外として、全人代常務委員会が認めれば可能となる。8月8日~11日の同常務委での議論が注目される。

 ネットメディア「香港01」は28日、香港政府が近く選挙延期を決め、8月初旬にも発表して立候補受け付けは来年に改めて行うと報じ、蘋果日報や香港経済日報も最長で1年延期するとの見方を伝えていた。

 香港政府としては、選挙戦が8月から本格化する前に延期の可否を最終決定するしかなく、孫子の兵法のように「戦わずして勝つ」には、延期によって政情を親中派に少しでも改善できるように時間を稼ぎたい意図が透ける。

 7月に入って香港では新型コロナ感染が再び広がり、29日から公の場で集まる人数は2人に制限された。飲食店内での食事も禁止されたが、30日に撤回された。民主派は「コロナという公衆衛生を口実にした政治的な延期決定」(公民党)と指弾し、提訴して司法判断を仰ぐ可能性を排除しないとしている。

 予定通り9月6日の投開票であれば、逆風下の親中派与党に圧倒的に不利な選挙となる。各国はコロナ流行中でも選挙が行われており、香港政府が苦し紛れと取られる形で直前に緊急法を使って「異例」の形で1年延期することへの国際世論の厳しい目をどうかわすか、注目されるところだ。

 民主派は11~12日に予備選を実施し、予想を超える約61万人が候補を選出。直接選挙枠(35議席)で23議席以上(前回選挙は19議席獲得)、業界ごとに投票する職能枠(35議席)で12議席以上(同11議席)を目標とし、初の過半数奪取を目指す。財政予算案を否決して行政長官を辞任に追い込む戦略は、選挙が延期されても一貫して変わらない。

 民主派は急進勢力「抗争派」の黄之鋒氏らも立候補しているため、選挙管理委員会のさじ加減で立候補停止処分を受けるケースも想定し、代理候補も準備。民主建港協進連盟(民建連)など親中派はコロナ対策を最優先に選挙延期も容認。香港政府も、選管が立候補剥奪を乱発することで国際世論から批判されないよう延期を望んでいる。

 有権者数は昨年の区議選より33万人多い約447万人で過去最多を更新。投票数・率が高いほど、浮動票が流れ込む民主派に有利な傾向のため、親中派は区議会選の惨敗を繰り返さないために選挙の超法規的延期を実現したいのが本音だ。