北朝鮮が原潜用鋼板の密輸模索


日露台中から 見本入手も不採用

 北朝鮮が原子力潜水艦の建造に向け、胴体に使う高張力鋼を日本、ロシア、台湾、中国のいずれかから調達するよう指示を出し、2014年には実際に台湾からサンプルを入手していたことが分かった。北朝鮮はその後、17年初めから原潜を建造し始めたとみられており(本紙17年9月14日付1面記事「北朝鮮、密かに原潜建造」)、原潜建造を進める北朝鮮の一貫した戦略が浮き彫りになった。(ソウル・上田勇実)

北極星3

10月2日、北朝鮮の国防科学院が東部の元山湾で行った新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」の試射(朝鮮通信・時事)

 北朝鮮人民軍で軍需貿易などを担当し、中国・北京に11年から4年間滞在した脱北者が本紙に明らかにしたところによると、09年に北朝鮮の最高権力機関である国防委員会(現、国務委員会)から原潜用の特殊鋼板を日本、ロシア、台湾、中国のいずれかから調達するよう指示されたという。

 脱北者は実際にロシアのサンクトペテルブルクまで行ったが、調達を断念。日本と台湾には入国できなかったが、13年10月に中国の犯罪組織を通じて台湾から一般鋼材より強度が高い高張力鋼のサンプルを密輸し、これを翌年4月に平壌に再度密輸させた。サンプルは2種類の成分が不足していたことを理由に同年8月に不適合と判定されたため、実際には使用されなかったという。

 北朝鮮は高張力鋼の密輸に向け、香港に拠点を設け、海上で瀬取りを行う計画だったといい、密輸元に対し手数料として最大2000万㌦まで支払う意向を持っていたという。その後、脱北者は密輸に関わることはなく、15年に韓国に亡命した。

 北朝鮮では東海岸の馬養島(咸鏡南道新浦市)に潜水艦を建造する大規模な施設があるが、実際に原潜を建造する場合は「米国の偵察衛星に捉えられない場所で隠密に進める」(北朝鮮問題専門家)可能性もある。

 北朝鮮の原潜建造について太永浩・元駐英北朝鮮公使は、本紙の取材に「2010年に金正日総書記が建造の必要性を強調していた」と明らかにした。同年は北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈や延坪島砲撃などで朝鮮半島情勢が緊迫し、北朝鮮国内では「米韓と軍事衝突した場合に備え、地上にあるミサイルを守るのは限界があるため、次の段階としてミサイルを海中から発射させることが検討されていた」(太氏)という。

 金正恩朝鮮労働党委員長は今年7月、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の搭載が可能とみられる新型潜水艦を視察したことが国営メディアで報じられ、SLBMの脅威拡大をめぐりさまざまな臆測を呼んでいる。