世界日報 Web版

製糸工の吹上重雄さん「作品は自分の分身」


独自技法を活かし新商品開発にも尽力、「現代の名工」に

製糸工の吹上重雄さん「作品は自分の分身」

和紙への色付け作業をする製糸工吹上重雄さん=2日、京都市北区

 現代の名工に選ばれた製糸工吹上重雄さん(71)は、金箔(きんぱく)を貼り付けるなどした和紙で、織物の糸として使われる「長箔」の職人。和紙に凹凸を付ける独自の技法を生かし、織物以外の分野での商品開発にも尽力してきた。「商品や作品は自分の分身」をモットーに制作を続ける。

 高校卒業後、西陣織の製造販売メーカーなどで勤務。1993年に妻と共に「箔のふきあげ」(京都市北区)を開業した。独立後は昼夜を問わずサンプルを作り続け、ベースとなる和紙に薄い和紙を張り合わせて凹凸を付ける独自の技法を考案した。

 和紙は細く裁断し、織物の緯(よこ)糸などに使われる。1本の帯を作るのに3メートルの和紙が必要で、完成に10日ほどを要する。一度手順を間違えたらやり直せない。周囲からは採算が取れないと言われたが、「僕はもの作りが好き。採算を度外視しても自分の作りたいものを世に出したかった」と話す。

 高級呉服が売れたバブル期と比べ、現在の仕事量はわずかだ。それでも、「今の流行のセンスで作れば、必ず欲しいという人はいる」と考え、技術を柔軟に応用した。レストランの床材などの建築資材や照明器具にも使われ、これまで作った作品は数千点に及ぶ。

 独立から約30年。吹上さんは「まだまだやりたいことがいっぱいある。仕事がある限り、健康な限り続けていきたい」とほほ笑んだ。