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小野田寛郎少尉が生きた時間をじっくり描く


「ONODA 一万夜を越えて」、カンヌ映画祭でも上映

小野田寛郎少尉が生きた時間をじっくり描く

フィリピン、ルバング島で約30年、任務をまっとうしようとした小野田寛郎を演じた津田寛治 ©bathysphere-To Be Continued-Ascent film-Chipangu-Frakas Productions-PandoraFilm Produktion-Arte France Cine é ma

 終戦を知らずに30年間フィリピン・ルバング島のジャングルで戦い続けた小野田寛郎さんの実話を基にした映画「ONODA 一万夜を越えて」。今年のカンヌ国際映画祭「ある視点部門」オープニング作品として上映された。

 終戦間近の1944年。陸軍中野学校二俣分校で秘密戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎(遠藤雄弥/津田寛治)は、上官である谷口教官(イッセー尾形)から、劣勢のフィリピンのルバング島でゲリラ戦を指揮するよう命令を受ける。谷口からは「君たちには、死ぬ権利はない」「何があっても玉砕せず、生き延びよ」と言い渡される。

 小野田は、ルバングに渡ったが、待ち構えていたのはジャングルと見えない敵だった。任務を完遂するため島の奥地に潜伏する小野田たち。日がたつにつれ、いつしか部下は小塚金七(松浦祐也/千葉哲也)ひとりとなった。その小塚も島民らしき住民からの襲撃を受け、命を落としてしまう。小野田は孤独と戦いながら生きていくしかなかった。ある日、旅行者と名乗る若者が小野田と出会う。その若者は鈴木紀夫(仲野太賀)と名乗った。小野田にとってこの青年との出会いが、この過酷な任務の終了を告げるものとなった。

 主演は小野田の若き日を遠藤雄弥、壮年期を津田寛治が演じ分けた。

 ふたりとも派手さはないが、堅実かつ印象的な演技を見せる俳優でもある。

 小野田の上官・谷口役のイッセー尾形の怪演ぶりには毎度のことながら驚かされる。戦中と戦後の表情や体の動きで全く違う人物像を演じている。

 作品全体を通して、イデオロギー感を感じさせず、じっくりと小野田が生きた時間を見せてくれる一作だ。

 フランスのアルチュール・アラリ監督がメガホンを取った。10月8日より全国ロードショー。

 (佐野富成)