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ブランク15年の柔道・工藤博子、口説いた親友


今は「先生」、絆を深めた仲元歩美さんと2人で世界へ

ブランク15年の柔道・工藤博子、口説いた親友

米国選手に勝利したパラリンピック柔道女子63㌔級の工藤博子選手(左)=28日、日本武道館

 親友に口説かれ、15年ぶりに袖を通した柔道着。視覚障害者柔道に舞台を移し、才能は開花した。パラリンピック柔道女子63キロ級に出場する工藤博子選手(36)=ユナイトアンドグロウ=。高校時代からの親友で、コーチを務める仲元歩美さん(37)と大舞台に臨んだ。

 未熟児網膜症による視力障害で、左目はほぼ見えず右も0・1以下。それでも健常者に交じった高校の県大会で個人3位となり、チームの副主将を務めた。当時の主将が仲元さんだった。

 高校卒業後は柔道から完全に離れていた工藤選手に、仲元さんは「東京大会で一緒に世界を取ろう」と声を掛けた。視覚障害者柔道のコーチとして世界のレベルを知っていたが、「工藤の方が強い」と感じていた。

 「絶対無理」。固辞する工藤選手を1年以上かけて口説き落とした。「才能もそうだが、悩みを抱えて落ち込んでいた彼女を変えてあげたい思いもあった」(仲元さん)という。

 工藤選手は2018年、故郷大分を離れ上京。仲元さんの下で練習を始めたが、約15年のブランクは大きかった。練習に体が追い付かず、故障も相次いだ。それでも勘を取り戻し、同6月、「負けたら大分に帰る」と覚悟を決めた試合で優勝。国際大会で実績を重ね、パラ出場を決めた。

 普段は何でも言い合う2人だが、工藤選手は練習中、「先生」と仲元さんを呼ぶ。当初は「友情を捨ててまでメダルは欲しくない」と嫌がる工藤選手と言い争いになったが、仲元さんは「あなたの人生を変えた以上、責任を持ちたい。指導者として、友情よりもメダルを取る」と譲らなかった。絆を深めた2人。悲願のメダルには届かなかったが、力を出し切った。