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女子マラソン一山麻緒選手、力走の8位入賞


「奇跡を起こす」恩師との約束胸に、日本17年ぶりの入賞

女子マラソン一山麻緒選手、力走の8位入賞

陸上女子マラソンで力走する一山麻緒選手=7日、札幌市

 「東京五輪で奇跡を起こす」。女子マラソン一山麻緒選手(24)=ワコール=は、鹿児島・出水中央高時代の恩師、黒田安名監督(66)と交わした約束を胸にスタートラインに立った。先頭集団に33キロ付近まで食らい付き、8位入賞を果たした。

 一山選手は全国高校総体に3000メートルなどで出場経験はあるが、目立った実績はない。父剛さん(53)、母優子さん(52)は「マラソンで五輪に出られると信じてやまなかったのが黒田先生。麻緒は素直なので、うのみにできた」と明かす。

 黒田さんと一山選手の出会いは中学2年の頃。陸上競技場で一人居残り練習する姿を見て、朝5時半からの練習に誘ったのがきっかけだ。以来、一日も欠かさず、真冬は霜焼けをつくりながら走り続けた。同校進学後も人一倍ストイックに打ち込んだ。

 「余力を残して実業団に送り出す」。黒田さんの指導方針だ。熊本で開かれた大会で、「朝、足を引きずってましたよ」と両親から聞くと飛んで駆け寄り、「麻緒は先があるんだから、今は走らない」と急きょ出場を止めたことも。黒田さんには「卒業後2、3年で日の丸を必ず背負う」と確信があった。

 ワコール入社約4年後の昨年3月の名古屋ウィメンズマラソン。五輪代表最後の一枠は松田瑞生選手が手にすると見られた中、黒田さんはレースの日の朝、「麻緒、きょうは歴史に残る走りをしよう」とメールした。「分かりました」と応じた元教え子は日本歴代4位のタイムで優勝、最後の切符をつかんだ。

 このタイムは後に、女子単独レースのアジア記録に認定された。「今度は東京五輪で奇跡を起こそう」「起こしましょう」。2人が交わしたもう一つの約束。両手を広げてゴールした一山選手は「悔いはないです」と笑顔で答えた。