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空手男子形喜友名、張り詰めた「武」で頂点に


努力の積み重ねは100点、最後まで手を抜かず極みの演武

空手男子形喜友名、張り詰めた「武」で頂点に

男子形決勝で金メダルを獲得した喜友名諒選手=6日、日本武道館

 365日、ひとときも休まず技を磨き上げてきた。空手男子形の喜友名諒選手(31)=劉衛流龍鳳会=。心に刻むのは「稽古でも、一瞬でも気を抜いたら死を意味すると思え」という師の言葉だ。爪の先まで神経を張り詰めた演武で、獲得した金メダル。勝利を告げられても気を緩めず、深々と一礼し、亡き母に勝利を報告した。

 5歳で空手を始めた喜友名選手が、沖縄県にある劉衛流の道場の門をたたいたのは中学3年の時。当時はもやしのような細い体。指導する佐久本嗣男師範(73)は「世界チャンピオンになりたい」と語る喜友名選手に「方法はある。365日稽古をやると約束できるか。それならやろう」と水を向けた。

 汗で道場に水たまりができるほどの猛稽古。一瞬の緩みも許さない限界の練習に、喜友名選手は必死で食らい付き、決して「降参」は言わなかった。筋力トレーニングと走り込みで長期的に体をつくり、結果が出始めたのは大学時代。以来、全日本選手権を9連覇、世界選手権を3連覇と無敵の第一人者になった。

 佐久本師範は「分岐点は、続けたか続けなかったか。努力の積み重ねは100点」と、手を抜かない弟子をたたえる。「爪の先まで完璧」を期し、琉球舞踊の動きを参考にするなど、貪欲に休みなく高みを目指してきた。喜友名選手がもう一つ大切にしているのは、母紀江さんから5歳の時に言われた「やるなら最後までやりなさい」という言葉だ。紀江さんは2019年2月、50代の若さで亡くなった。最後まで「がんばらんと」と、息子の五輪出場を楽しみにしていた。

 金メダルが決まると喜友名選手は舞台の中央で正座し、両手を付いて一礼。天国の母へ「しっかり約束を守ったよ」と伝えたという。表彰式は紀江さんの遺影を手に臨んだ。母への感謝、師への感謝を胸に、最後まで手を抜かず、極みの演武をやり遂げた。