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精神的に成長、不屈の一手で届いた「銀」


手首などに故障を抱えるも、突破力と強いメンタルでつかむ

精神的に成長、不屈の一手で届いた「銀」

スポーツクライミング女子複合決勝、ボルダリングの野中生萌選手=6日、青海アーバンスポーツパーク

 スポーツクライミング女子複合の予選で、手首などを痛めていると明かした野中生萌選手(24)=XFLAG=。突破力と強いメンタルを武器に決勝戦に挑み、銀メダルをつかみ取った。

 3姉妹の末っ子。小学2年の時、山登りが趣味の父に連れられた東京・池袋のジムで、「シンプルに楽しい」と魅了された。大会に出るようになり、「落ちるのが怖い」とがむしゃらに登った。

 体の成長期を迎えた中学2、3年時は結果を残せず、日本代表に手が届かなかった。「今に見てろ」「私の将来は絶対、大丈夫」。反骨心と根拠のない自信を支えに、地道に練習を続けた。

 中3の15歳から指導する伊東秀和コーチ(44)は、「当時からバネ、バランスの取れた筋肉、雰囲気にのまれない強いメンタルを備えていた」と語る。ワールドカップ(W杯)決勝レベルを目標に据え、16歳で代表入り。ボルダリングに絞り登りの感性を磨いた。

 2016年にW杯で初優勝し、18年には21歳で年間総合優勝を果たした。伊東さんは「自信も付き、五輪に向けた次の段階に集中できた」と指摘する。培った「世界一の突破力」(伊東さん)は、苦手とする持久系のリードでも武器になった。

 五輪代表選考会を兼ねた世界選手権は、肩を負傷した状態で迎えた。伊東さんは「予選から最低ラインを設けて、余裕があればあと2手出していいと決めて送り出した」と明かす。はがれ落ちそうな体を気迫で支え、伸ばした数手が五輪へとつながった。

 伊東さんは「精神的に相当成長した」と話す。五輪本番でも故障を抱えた教え子は「体を壊してでもメダルを取りにいく」と決意。不屈の一手がメダルに届いた。