世界日報 Web版

野口啓代選手、限界を超え有終の美を飾る「銅」


第一線を走り続けたベテラン、基礎から見直し苦手を克服

野口啓代選手、限界を超え有終の美を飾る「銅」

スポーツクライミング女子複合決勝、ボルダリングに臨む野口啓代選手=6日、青海アーバンスポーツ

 「諦めず登れてよかった」。東京五輪を最後に現役引退を表明しているスポーツクライミング女子複合の野口啓代選手(32)=TEAM au=が銅メダルを獲得した。目標の頂点には届かなかったが、「それ以上にうれしい気持ち」。壁にぶつかっても第一線を走り続けたベテランが、有終の美を飾った。

 ワールドカップ(W杯)年間王者を2度経験していた野口選手は、22歳の頃スランプに陥った。得意とするボルダリングで若い世代が台頭し、ダイナミックな登りが世界の主流に。しっかり持って登るタイプの野口選手は、約3年結果を残せずにいた。「自分の強みを生かせば勝てる」。周囲の励ましを糧に、足の使い方など基礎を見直し、さらに2度の年間優勝を重ねた。

 しかしこの数年、W杯で何度も頂点を競った海外のライバル選手が一線を退いた。父健司さん(57)によると、目標を見失った野口選手は競技から身を引くことを考え始めたという。

 そのさなかの2016年、東京五輪でのクライミング競技採用が決まった。4年後を目指すか迷った末、東京を花道にすると決意。体づくりから見直し、苦手意識があるスピードをこなせるよう瞬発力も磨いた。「すごく高いと思っていたハードルが自分のものになってきた」。野口選手は語った。

 五輪代表を決めた19年の世界選手権。試合を見る健司さんの目には涙が浮かんでいた。代表の喜びではなく、「啓代のクライミングに感動したから」。母信子さん(59)は「『限界はあの辺だろう』と見ていたら、それ以上に登ったんです」と挑み続ける娘を誇った。

 1年の延期を経て、32歳で挑んだ最初で最後の舞台。勝負を懸けた最終種目のリードは、「疲れて限界だった」が、気持ちで最後の一手を伸ばした。