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選手生命の危機、母の決意「やめてもいいよ」


卓球団体で銀の平野美宇選手、3年半前に大スランプに

選手生命の危機、母の決意「やめてもいいよ」

卓球女子団体決勝第1試合のダブルスでプレーする石川佳純(右)、平野美宇組=5日、東京体育館

 卓球女子団体で2大会ぶりの銀メダルに貢献した平野美宇選手(21)=日本生命=。3年半前、夢を失いかけ、選手生命の危機に直面した。ラケットを手に取るだけで涙がこぼれ落ちた日々。復活の陰には、背中を押した母真理子さん(52)の決意があった。

 破竹の勢いだった。2016年ワールドカップ女子シングルスで日本勢初の優勝。17年アジア選手権は日本女子として21年ぶりに制し、続く世界選手権でも48年ぶりのメダルを獲得した。

 ただ、その後の半年は大スランプに陥り、「死んだ魚の目をして試合に出ていた」(真理子さん)。18年1月には、エリートアカデミーの寮の部屋から2週間出られず、食事も喉を通らなくなった。ラケットを握れば涙が出た。「卓球やめたい」。初めての異変だった。

 真理子さんは実家の山梨県から上京、小さな焼き肉店で生気を失った娘と向かい合った。「今までが無駄になる」と迷いを見せる娘に、「これからの人生に卓球はなくていい、他の夢に向かって別の道を歩んでいきたいと思うなら、やめて帰っておいで。編入する高校を探そう」と明言した。ただ、「もし卓球やりたいと言うなら、精いっぱい応援してあげる」と、「宿題」を残した。

 しばらくしてLINEに着信があった。「やっぱり五輪の夢は諦めたくない。全部を自分の責任でやってみたい」。周囲の後押しを受け、プロに転向した。真理子さんは「もし卓球じゃない人生を生きると言ったら、本気でそうしようと思った。そうじゃないとあの子も本気で選べなかった」と振り返る。

 東京五輪は石川佳純選手との激しい選考レースの末、シングルス代表を逃した。真理子さんは「夢を失いかけていた頃に比べれば、どんなに激烈だろうと選考レースは幸せな時間だった」と語る。

 団体決勝は中国に完敗。涙ぐむ姿もあったが、「悔しいけど、この舞台に立てて楽しかった」と語った。