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体操団体の萱和磨主将、栄光の片隅で固めた決意


リオでは悔しい代表補欠、「失敗しない男」へ飛躍の糧に

体操団体の萱和磨主将、栄光の片隅で固めた決意

体操男子の萱和磨選手=24日、有明体操競技場(時事)

 2016年リオデジャネイロ五輪の体操男子団体決勝は、会場の片隅から金メダルの歓喜に沸く日本代表の姿をじっと見詰めた。萱和磨選手(24)=セントラルスポーツ=が、東京五輪の「金」は自らつかむと誓ってから5年。団体の主将として仲間を鼓舞し、逆転の銀メダルに貢献した。

 15年の世界選手権では37年ぶりの団体優勝に貢献。得意のあん馬で銅メダルを獲得したが、リオ五輪は紙一重で代表入りを逃し、神本雄也選手と共に補欠として合宿地サンパウロに同行した。

 母恵子さん(52)は団体予選を中継するテレビ画面に、せめてサポートする息子の姿をと見入った。「どの辺にいるの?」。メッセージを送ると「いや、行ってない」と返信があった。「大丈夫」「変わりない」「特に何もないよ」。何を尋ねても無機質な言葉ばかりが跳ね返って来る。記念写真でもと頼むと、「出てないから記念ではない」と突き放された。

 団体決勝は3大会ぶりの金メダル。弟の翔悟さん(22)とテレビ観戦していた時だった。歓喜の輪を遠くスタンド席から眺める息子が不意に映った瞬間、恵子さんの目に涙があふれた。五輪を夢見て小学2年で体操を始めて以来、泣き言の一つも言わなかった子が、見たこともない顔をしていた。翔悟さんも「お兄ちゃんのあんな顔見たことない」と泣いた。

 恵子さんは知る由もないが、萱選手は代表チームがリオにたった後も、神本選手、コーチと合宿地に残り、試技の映像をチームに送る毎日だった。空調の利かない部屋で、満足な食事も取れず、チームからの連絡がほぼ絶えた中、故障者が出た場合に備えていた。母と弟が画面越しに見たのは、19歳にはしまい込みようのない悔しさ、やるせなさが張り付いた表情だった。

 この経験は、「あん馬の萱」からオールラウンダーへ脱皮する原動力に。人一倍練習に没頭し、安定感抜群の演技で「失敗しない男」と呼ばれるまでに強くなった。

 これまで獲得した数々のメダルは「通過点」と、全て恵子さんに預けている。代表入りが内定し、コロナ禍でほとんど会えなかったからとお祝いに誘った母に、ぶれない答えが返ってきた。「代表入りはお祝いじゃないので、金メダル取ってからでいいよ」。次は個人総合に挑む。