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相模原殺傷事件から5年「誰かが話さないと」


被害者の父が事件を語り続ける、「助け合える社会を」

相模原殺傷事件から5年「誰かが話さないと」

相模原殺傷事件から5年となるのを前に、取材に応じる被害者の父、尾野剛志さん=6月23日、神奈川県座間市(時事)

 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年、入所者ら45人が殺傷された事件は26日で発生から5年となる。事件で重傷を負った尾野一矢さん(48)=神奈川県座間市=の父、剛志さん(77)=同=は「誰かが話さないと」との思いで事件について語り続けてきた。

 一矢さんは事件で首や腹などを刺され、一時は生死をさまよった。剛志さんは当初、事件について話すのがつらかったが、「息子は九死に一生を得て戻ってきた。世間の人に事件の真相を聞いてもらいたい」との一心で、事件から1年を過ぎた頃から公判傍聴のほか、全国各地を回って講演活動を続けてきた。

 この5年の間に大きな変化もあった。20年夏、一矢さんは20年以上暮らした施設を出て、座間市内で1人暮らしを始めた。ヘルパー15人による持ち回りの介助を受けながら、自立への一歩を踏み出した。それから1年近くがたち、ヘルパーと近所のスーパーで買い物をしたり、好きな陶芸を楽しんだりする一矢さんの姿に「介護者の人と一緒に(人生を)走っている」と剛志さんは目を細める。

 1人暮らしを始めてから大きなトラブルもなく、1週間から10日ごとに帰省しても、一矢さんは自宅に帰りたがるという。剛志さんは「ありがたいような、寂しいような」とはにかむ。

 剛志さんは事件から5年がたっても、「もっと事件を知ってほしい」という思いで、講演活動などを続けていく方針だ。「障害を持つ人もそうでない人も助け合える社会をつくることができるよう、命ある限り話していきたい」と語った。

 事件は16年7月26日に発生。元職員の植松聖死刑囚(30)が園に侵入し、入所者19人を包丁で殺害し、職員を含む26人に重軽傷を負わせた。植松死刑囚は20年3月、一審で死刑判決を言い渡され、弁護人の控訴を取り下げ刑が確定した。26日は神奈川県の黒岩祐治知事が園で献花するほか、一般の献花も受け付ける。