世界日報 Web版

自転車アリザダ選手「難民選手に門戸開きたい」


誹謗中傷や暴力受け渡仏、母国アフガンへの思いを胸に

自転車アリザダ選手「難民選手に門戸開きたい」

五輪のロゴ入りTシャツを着てポーズを取るアフガニスタン出身のメーソマ・アリザダ選手=1日、スイス・エーグル(AFP時事)

 東京五輪の難民選手団に、自転車ロードレースで奮闘を誓う女性がいる。アフガニスタン出身のメーソマ・アリザダ選手だ。亡命先のフランスで練習に励み、国際オリンピック委員会(IOC)からの奨学金を活用して、大舞台に臨む。アリザダ選手はAFP通信の取材に「自分に続く難民選手のために門戸を開きたい」と夢を語った。

 イスラム系シーア派の少数民族ハザラ系。反政府勢力タリバンが政権を掌握した1996年ごろの激動期に生まれ、幼少期を隣国イランで過ごした。

 約9年間の滞在を経てカブールへ帰郷。だが、タリバン政権崩壊後でも、女性に向けられる目は厳しい。自転車に乗ること、学校に通うことすらままならなかった。

 その後母国で自転車競技に取り組めたのは、父が心の支えになったから。「男女ともに権利は平等だ」。父はそう言ってくれた。徐々に頭角を現し、16歳でナショナルチームの一員に加わった。

 しかし、試練が待ち受ける。スポーツウエアを着用するアリザダ選手に対する誹謗(ひぼう)中傷や暴力だ。走行中、車中の男性からいきなり頭を殴られた。石を投げられたり、車にはねられそうになったり。親族からも「もう(競技を)やめろ」と迫られた。

 風向きが変わったのは2016年。フランスで放映されたドキュメンタリー番組への出演がきっかけだった。視聴者から支援の声が上がり、輪が広がる。ビザ発給が認められるまでに至り、翌年、家族で移住。仏北部リールの新たな練習拠点では、それまで週に1度しかできなかった屋外トレーニングも自由にできる。支援金も集まった。

 今年9月11日で米同時テロから20年。バイデン米政権は8月末までにアフガンでの駐留米軍を完全に撤退すると決めたが、それに乗じてタリバンが支配地域を拡大。今月17日に再開したアフガン政権とタリバンの和平交渉の先行きも不透明だ。政情不安にある故郷へのメッセージを込めるように、アリザダ選手は仏誌パリマッチ(電子版)の中でこう話している。

 「女性が自転車に乗るのはふさわしくない、頭にスカーフを着けるイスラム教の女性が自転車に乗るのは変だ、と考える人を説得したい。普通のことなのだと」。強い思いを胸に、五輪に挑む。