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熱海土石流で犠牲、最後の電話「ありがとう」


亡くなった木村さん、友人ら悲痛「死を受け入れられない」

熱海土石流で犠牲、最後の電話「ありがとう」

静岡県熱海市の土石流災害で、死亡が確認された木村京子さん(関沢浩さん提供)(一部、画像処理しています)(時事)

 静岡県熱海市の土石流で、犠牲となった木村京子さん(84)は、避難を促す電話に「分かりました。ありがとうございます」と応じたのが最後の言葉となった。「律義でよく笑う人」と誰からも好かれる人柄。木村さんが暮らしていたアパートの大家の男性は8日、「死を受け入れられない」と悲痛な声を上げた。

 「危ないから急いで逃げて」。大家の鈴木康夫さん(72)は3日午前10時半ごろ、土石流の発生を知り、自身が管理する逢初川沿いにあるアパートの住人3人に慌てて電話をかけた。木村さん以外の2人は外出中で無事だったが、アパートは濁流にのまれ、根こそぎ押し流された。木村さんの遺体は同日、約300メートル離れた港で発見された。

 鈴木さんによると、木村さんは長く1人暮らしだった。避難を呼び掛けた際、いつものように元気な声が返ってきたが、その後何十回かけてもつながらなかった。「どうにか逃げていて」と祈ったが、かなわなかった。

 近所に住む高橋進さん(77)はアパートが土石流に押しつぶされる様子を目撃した。「バリバリとすごい音で地獄のような光景だった」と振り返る。妻里子さん(72)は木村さんと同じ茨城県出身で、35年来の友人という。木村さんは、里子さんが勧めた美容室に長年通い続けるような「優しくて律義な人」だった。突然の別れに、「あまりに急で実感が湧かない」と肩を落とした。

 近くのホテルなどでマッサージをする仕事に従事していた木村さん。知人の関沢浩さん(54)によると、「高齢だが、足腰が元気でシャキシャキ働く人だった」。8年ほど前、東京・浅草に友人らと旅行し、「また行きたいね」と声を掛けられると、ケラケラと笑って喜んだという。関沢さんは「楽しかった時の笑顔しか思い浮かばない。ゆっくり休んでほしい」と悼んだ。