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新型コロナ無症状感染者数 現実反映せぬ中国の発表


《 記 者 の 視 点 》

 中国の国家衛生健康委員会は3月31日、当局が把握している新型コロナウイルスの無症状感染者が「30日までに1541人を数え、うち205人が外国からの入国者だ」と明らかにした。だが、この数は現実を反映しているとは思えない数字だ。

 中国はこれまで、新型コロナウイルスに感染しながら発熱や咳といった症状のない「無症状者」の数を、感染者として計上してこなかった。これを告発したのは、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(電子版)だ。

 同紙は3月22日、2月末時点で中国の新型コロナウイルス感染者4万3000人以上が、「無症状」を理由に感染者の統計から除外されていたと報じた。2月末時点の中国の感染者は公式発表では約8万人だが、これら無症状者を含めると12万人を超えていた計算となる。

 衛生健康委は2月、検査で陽性でも症状がなければ「病原体を広げる確率は低い」と見なし、感染者にカウントしないとの判断基準を示してきた。だが、河南省で無症状者から感染が拡散しただけでなく、広東省や甘粛省でも無症状者が感染源と疑われる例が出てきた。

 それを踏まえた無症状感染者数の公表ということだが、それにしては香港紙の告発数4万3000人と懸け離れた数に違和感を感じる。伝統的に隠蔽(いんぺい)体質が内在する中国では、データをうのみにするととんでもないことになりかねない。

 中国はITやビッグデータ処理など監視国家機能を駆使して、新型コロナの感染拡大に対処している。何より膨大な数を動員する人海戦術で、検問所での聞き取りや赤外線体温計による検査、戸別訪問により、疑わしい症状の人を記録している。

 監視には、中国の就労世代のほとんどが持っているスマホが強力なツールとなる。スマホの健康コードアプリには赤と黄、緑のQRコードが表示されるようになっており、微熱や咳などがあれば赤色表示となり、14日間の自主的な隔離生活を求められる。もしアプリが黄色のQRコードを示していたら、他の人に感染するリスクは低いため自主的な隔離期間は7日とされる。

 市内を自由に移動するには、市内各地に設置されている検問所でスマホを取り出し、自分の健康状態は緑色のQRコードであることを示す必要がある。

 こうした強力な監視インフラと人海戦術で、新型コロナ封じ込めに動いているのは事実だが、その数字が正しいかどうかという疑わしいデータ問題は残ったままだ。

 今回の中国の初動対応の失敗には、世界があきれたものだ。昨年12月初めに武漢で患者が発生した際、勇気ある医師・李文亮氏が告発したのに当局は隠蔽した。

 中国が人から人への感染を正式に認めたのは、今年1月20日になってからだ。この間、感染者の国境を越える移動を止めず、ウイルスの封印に動かなかったため、新型コロナは世界に拡散した。何より問われるべきは国際社会の一員である中国政府の自覚の欠落だ。

 さらに今回の無症状感染者数にしても、経済再建に舵(かじ)を切った北京の政治目標に合わせた可能性のある調整数であることが懸念される。

 編集委員 池永 達夫