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介護予防、社会とのつながりも重要


 加藤勝信厚生労働相は、高齢者の心身に衰えが生じる「フレイル」の状態に陥るのを防ぐため、健診でのチェックに取り組む方針を表明した。

 生活の質(QOL)を高めることができれば、高齢者が生き生きと老後を送ることができ、社会で活躍するチャンスが増えることにもなる。フレイルへの対策強化を着実に進めたい。

来年度からフレイル健診

 フレイルは、筋力などの身体機能が低下し、介護を必要とする一歩手前の状態のことで、適切な栄養摂取や運動で改善できる。全国で約350万人の高齢者が該当するとみられている。

 厚労省は来年度から75歳以上の人を対象に、フレイルになっているかどうかをチェックする健診を実施する。「1日3食きちんと食べているか」「きょうが何月何日か分からない時があるか」など15の項目を質問し、症状の把握に努める。

 質問の中には「普段から家族や友人との付き合いがあるか」という社会性に関するものもある。孤立して1カ月間ほとんど外出しない高齢者は、外出する高齢者に比べて2年後の死亡率が2倍高いとされ、社会とのつながりが健康に及ぼす影響は大きい。こうした質問は重要だ。

 健診の結果、人との付き合いが乏しい高齢者には趣味のサークルなどを紹介したり、病気が疑われる人には医療機関の受診を促したりする。適切な指導や助言を行って介護予防につなげることが求められる。

 2018年の日本人の平均寿命は男性81・25歳、女性87・32歳で、いずれも過去最高を更新した。一方、健康上の問題がなく、日常生活が制限されることなく送れる期間を示す「健康寿命」は、16年時点で男性72・14歳、女性74・79歳だった。

 政府は40年までに健康寿命を男女とも3歳以上延伸させて75歳以上とする目標を掲げている。高齢者に生き生きと暮らしてもらうには、平均寿命と健康寿命を共に延ばしつつ、その差をできるだけ縮めることが大きな課題だと言えよう。

 フレイル健診のような取り組みには、介護が必要になる人を減らすことで社会保障費の伸びを抑える狙いもある。65歳以上の高齢者人口がピークを迎える40年度時点の社会保障給付費は最大190兆円に達するとの政府試算もある。これは18年度(121兆3000億円)の約1・6倍に上る計算だ。

 少子高齢化が進む中、社会保障制度を持続可能なものとするには、高齢者に社会の支え手になってもらうことも重要だ。現行の公的年金制度では支給開始年齢を60~70歳の範囲で選べるが、高齢者の就業意欲を高めるため、選択幅を70歳より後に広げる制度を求める意見もある。

 今年8月の年金財政検証では、75歳まで働いてから年金を受け取れるようにすると、現役世代の手取り収入並みの年金額を確保できるとの結果が出た。こうした制度改革を実施するのであれば、やはり健康寿命の延伸が欠かせない。

高齢者の居場所づくりを

 高齢者の健康増進には、孤立させないための取り組みも必要だ。高齢者が安心できる地域の居場所づくりに努めてほしい。