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認知症大綱案、安心して住める環境整備を


 政府は新たに策定する認知症対策大綱の原案をまとめ、70代の人口に占める認知症の人の割合を2025年までに現状より6%減らす数値目標を初めて設定した。

 6月に関係閣僚会議を開催し、大綱をまとめる。

予防と共生の二つを柱に

 日本の65歳以上の認知症高齢者数は12年で462万人と推計されており、25年には約700万人に達すると見込まれている。国の認知症対策はこれまで、15年の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を基に、認知症の人との共生に力点を置いてきたが、対策の強化は急務だと言える。

 今回は、予防と共生の二つを柱に対策に取り組む。予防には適度な運動や社会的孤立の解消が役立つとみて、原案では具体的な取り組みとして高齢者が地域で交流できる「通いの場」の活用拡大、市民農園や森林空間、大学の公開講座などの場を最大限活用することを挙げた。

 厚生労働省は、運動不足や孤立のほか、高血圧、喫煙、うつなどが、認知症となるリスクを高める要因である可能性が高いとみている。

 しかし、こうした要因を解消すれば予防できるとは断言できない。健康的な生活習慣を心掛けている人でも認知症になることはある。

 認知症については、十分な科学的根拠を持つ予防法が確立されていないのが現状だ。原案では、70代前半の認知症の人の割合を19年からの6年間で3・6%から3・4%、70代後半は10・4%から9・8%に低下させ、70代全体で6%減らすことを目指すとしているが、数値目標に過度にこだわることで認知症を発症した人が肩身の狭い思いをするようなことは避ける必要がある。

 もっとも、25年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる。根本的な予防法ではないとしても、効果が見込める取り組みを展開するなど認知症の予防対策を積極的に進めることで、医療や介護にかかる財政負担増大に歯止めをかける狙いは理解できる。

 原案では、予防法の確立に向けたデータ蓄積を進める方針も掲げた。予防に効果があるとされるサプリメントを認証する仕組みも検討する。治療薬の開発なども進めたい。

 もちろん、共生の取り組みも継続、強化すべきだ。認知症を正しく理解し、認知症の人やその家族をボランティア活動として応援する「認知症サポーター」は、自治体や企業などが開催する養成講座を受ければ誰でもなることができる。

 認知症への関心の高まりなどからサポーターの人数は増加しており、16年度末時点で約883万人に上る。政府は20年度末までに計1200万人を養成する目標を掲げている。

地域の結び付き強めたい

 また、保健師ら専門家に患者や家族が悩みを相談できる「認知症カフェ」に関しても、20年度末までに全市町村に開設を呼び掛けることも目指している。認知症の人たちが安心して住み続けられる環境を整えるためにも、地域の結び付きを強めていきたい。