世界日報 Web版

年頭にあたって 未来世代に「倫理的責任」もて


本紙主筆 木下義昭

新たな力で「銀河系統」を解き放て

 厳冬の天空に、光り輝く無数の星や銀河…。宇宙の年齢は現在約137億歳、太陽系・地球は約45億6800万歳といわれる。われわれ人類が地球上に生存できる環境造成までに、かくも想像を絶する歳月が流れていた―。

 地球は、毎日自転し太陽の周りを公転、太陽自身も自転、太陽系も天の川銀河の中を回っている。太陽系が銀河系を公転する速度は秒速約240km、地球の太陽を回る公転速度は秒速約30km。古来、秩序を保ちながらそれぞれ個性を尊重し悠久な歴史を築いてきた。地球は宇宙という壮大な揺りかごの中で、或るときは左右に、そしてまた前後に上下に、揺られながら生かされてきた。

 もうけつしてさびしくはない

 なんべんさびしくないと云つたとこで

 またさびしくなるのはきまつてゐる

 けれどもここはこれでいいのだ

 すべてさびしさと悲傷とを焚いて

 ひとは透明な軌道をすすむ

 ―宮沢賢治詩集『春と修羅・小岩井農場』―

 

 大草原に仰臥、俯仰天地に愧じずと天空を眺望すれば、大地にしっかりと抱かれ、「地軸」「自転」を体感しながら、昼夜にわたって展開する華麗かつ深遠な天体ショーを楽しめよう。

 海上から高山から水平線、大海原を望むれば、大地が海を抱擁、そして海が大地を潤していること―大自然が織り成す荘厳で精緻な「天然美」を覗えよう。

 宙宇は絶えずわれらに依って変化する

 潮汐や風、

 あらゆる自然の力を用ゐ尽すことから一足進んで

 諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ

 新らしい時代のコペルニクスよ

 余りに重苦しい重力の法則から

 この銀河系統を解き放て

 ―宮沢賢治詩集『詩 ノート』―

 

 時に、未曾有の予知不可能な荒ぶる自然の振る舞いもあろう。我々が住む「天の川銀河」と「アンドロメダ銀河」はおよそ100億年前に一度衝突していた可能性があるという。現在、両銀河は秒速約100kmの速度で接近しつつあり、今から30億年後には衝突することが予測されている。地球自体がその創造目的からして破滅の運命を辿ることはないとしても、それを完全に「回避」するため、この銀河、この地球に生命を授けられたわれわれ人類の責任は、地球より重い。

 新たな詩人よ

 嵐から雲から光から

 新たな透明なエネルギーを得て

 人と地球にとるべき形を暗示せよ

 

 誰が誰よりどうだとか

 誰の仕事がどうしたとか

 そんなことを云ってゐるひまがあるのか

 さあわれわれは一つになって

 ―宮沢賢治詩集『詩 ノート』―

 

 われわれ一人ひとりは、「天の川銀河」を歩き、走り、通過する「切符」をしっかり持って行かねばならぬ。未来世代に対する現代人の「倫理的責任」保有者の矜持とともに、火や嵐や風雨や荒波や風雪、その中を「大股にまっすぐに」。

 然り、「切符」の目的地、終着駅は、美しき蒼きわが永遠の地球…。